1人暮らしのKさんから学ぶもの。

Kさんは、93歳の独り暮らしをしている女性です。・・・ここ3年、私は、ケアマネとして毎月定期的に訪問し、彼女のサービス計画をたてさせて頂いています。介護保険にて彼女が使っているサービスと云えば、週2回のヘルパー援助で、掃除をしてもらっていることと、福祉用具レンタルで、歩行器を借りていることぐらいです。あとは、殆ど独りで自活されています。

訪問するたびに感心することは、彼女の気持ちの中で、不必要な援助は必要がないことをしっかり認識されていることです。

ですから、私がやっていることは、色々お話して下さることを、聞く事が仕事なのです。・・・毎日の生活や、お医者さんとのやり取り、買い物や人との話など多岐に渡りますが、いずれも後味の良い話しっぷりなので、聞いていても疲れることがないのです。



Kさんは、健康については、特に、細心の注意を払われており、(昔、保健婦をされていたことにも繋がりますが)決して、無駄食いをしたり不規則な時間を過ごしたりされません。何時も、同じ時間に起きられ、同じようなメニュウで食事をされ、健康のためには2・3日に一回は外出と買い物に出かけられ、夜は、早く寝られます。

御自身で健康のために決められた生活態度を、誰が何と言おうと護って暮らされており、そうした無理のない自分に一番あった生活態度が、結果的には長生きの秘訣になっていると思われます。



しかし、そんな彼女にも、実は、最近招かざる客が現れました。

それは、人間ではなく、”癌”と言う病気です。・・・去年の末に、どうも可笑しいということで主治医に問い詰め、”癌”であることを知らされたのです。

高齢でのがん細胞増殖のせいか、現在、急激な病状悪化は無いのですが、何時、病状が悪化するか予断を許さない状態です。

流石に、”癌”であることを知った当時は、少し気落ちされていましたが、現在、彼女は以前と変わらぬ、マイペースで自宅での療養生活を継続されています。・・・其の安定の秘訣は、一つには、主治医の適切なサポートが続いているからですが、何といっても彼女自身の生き方にもあります。普通なら、気持ちが落ち込んで、何事も投げやりになったり、取り乱したり・・・となりがちですが、Kさんの場合は、何時もと変わらない暮しが続いていて、返って、以前より元気になられたようにも思えます。



常々彼女は話しています。『私は、何時死んでも悔いはないのです。此れだけ長生きし、生きてきたんだから、今更死ぬことには抵抗はありません』

この言葉は、投げやりに言われるのではなく、自然に発せられるので、聞いている此方の方は、『なるほど・・・』と肯くほかないのです。



何時、死んでも良いけれども、お呼びが来るまでは、自身で何時ものようにマイペースで生きていたい。延命策は取らないで下さい。此れが、ケアマネと主治医に念を推して云われていることです。



独りで生きていて、寂しいとか、誰かに相手をしてもらいたいだとか・・・そんな弱みを少しも見せられないKさんが、ぎゅっと手を握ってあげたいほど感心します。



話をしながら、大声で笑ったり、笑顔で話を交わすときが、Kさんにとっても楽しい時間であるように思えます。



何時まで、こうした交流を続けられるのか分かりません。

ひょっとすれば、あまり長くこうした触れ合いが遺されていないかもしれません。

でも、現在の生活を、精一杯生きておられるKさんが、好きです。

出来れば、もっともっと長生きをして頂きたいのですが、Kさんの生命力が、どこまであるのか、誰にも分かりません。願わくば、最後まで、Kさんらしい生き方が、貫けるよう、ケアマネとして見守って生かせて貰いたいと思います。(*^_^*)