桑田の大リーグ退団に思う。

早すぎる退団に思える。まだシーズンが終わっていないが、大リーグでは1軍から降ろされると、すぐマイナー契約をするかどうかが問われる。そこでもう一度下から這い上がって、実績を上げて1軍に戻ることは可能だが、桑田は今度は首を縦に振らなかった。…それは何故なのか?彼が、パイレーツに入団し、1軍に這い上がるまでは、承知のように人並み以上の努力が積み上げられ、それが認められて1軍のマウンドに立った。・・・4月に、審判との衝突により足を負傷した事件、・・・あれを聞いた時は日本の誰もが「また、やっちゃったのか?」と溜息をついたものだ。しかし、桑田は負傷にめげず、再びマウンドに這い上がった。この彼のがんばりは、一体どこから生まれているのだろう?

そもそも、巨人に長く在籍し、大リーグに移籍するには遅すぎる年齢のハンディーがある。・・・普通なら、自分のマイナス要素を考えれば、無謀な挑戦に思えた彼の大リーグへの単独チャレンジ・・・これには、彼独特の哲学があるようだ。彼が、マスコミなどから取材を受け、インタビューなどで話す内容を聞いていると、常に控え目で野球に対する深い愛情が溢れているようだ。

だから、彼を知る日本のプロ選手たちは、心情ではみな彼のことを応援している。

彼が大リーグに挑戦することの是非ではなく、彼の意気込み、野球に対するまじめな思いを知っているから、だれもが彼のことを応援している。…もちろん、彼の家族も例外ではないだろう。



人一倍の努力が実り、桑田は大リーグの1軍のマウンドに立ち、イチローや日本人選手と対戦する機会も与えられた。

結果は、8月には戦力外通告を受けることになるが、1軍のマウンドに立つという彼の夢はかなった。・・・お金や名誉ではなく、桑田にとっての最大の勲章が適ったから、もう彼は笑顔で退く決意を持ったわけである。



わずか数カ月の大リーグでのピッチング実現は、言ってみれば線香花火みたいにささやかな栄誉かもしれない。

しかし、桑田にとっては、野球をずっとやってきた自分の夢の実現であった。

一旦投手として自分が投げることが出来たなら、力を出し切れる最後の最後まで投げ続けて楽しみたい、という彼の意思は、スポーツを愛好するものの心を打つ。



何時でも全力投球をし、持っている能力をすべて出し切ろうと努力する彼の姿は、時には負傷等によりマイナスに作用することもあったが、最後まで彼のスタイルを守り続けていたと思う。

野球をこよなく愛し、投手として可能な試みを常にチャレンジし続けていた彼の存在は、やはり大きな人間性を感じる。



さわやかに退団した桑田が、今後どういう第2の野球人生を歩むのか?分からないが、彼の歩いてきた道はきっと今後プロになろうとする若い選手には大いに学ぶべきものがあると思う。心から桑田に届けたい。

御苦労さま!しっかり、大リーグを楽しめたかい?◆桑田真澄(パイレーツ) 通算成績 (8月13日現在) 0勝 1敗 0S 防御率9・43 投球回 21被安打25 自責点22 奪三振 12失点 23与四球 15彼が残した1軍での成績は惨憺たるものだ。・・・しかし、そのマウンドに立つまでの彼の努力と情熱を考えるとき、数字だけではない実績の裏にある桑田の魅力が隠されているように思える。