有難う!

中村伸一さんとやなせななさん・・・この取り合わせは、どんな意味があるのか?よく分かりませんでした。
テーマである、「奈良からつながる和のケア〜人と暮らしを結ぶケアマネジメントの力〜」に関連する話や歌が披露されるであろうとは考えていた。
しかし、今日の第12回近畿介護支援専門員研修大会を企画した人たちにより、選ばれた記念講演と特別講演でスポットライトがあてられた意味は実はもっと深いところで繋がっていたのかもしれないと感じました。

◎中村さんは、へき地の名田庄診療所で20年”寄りそ医”医療に携わってこられたドクターですが、まず驚いたのは、しゃべり方の何と早いこと!普通講演する弁士なら、分かりやすくじっくりと話すことが基本的なマナーと考えるんですが、中村先生声がデカくて超早口!
 次々にパワーポイントを示しながら、どんどん村のことケースのこと患者さんのことを話していかれた。・・・まずはこのパワフルな弁舌に驚きましたが、話のところどころに「笑いどころ」も仕掛けておられ、会場は深刻な話の時でも絶えず笑いが切れませんでした。
 担当したケースの沢山を話して下さったのですが、もう観ることが出来ないと覚悟をしておられたガン末期の男性高齢者が、お孫さんやケアマネ看護師に囲まれて車いすで桜の花を背景に記念写真を撮ってもらった写真、
同じくもう桜が観れないと覚悟をした最後の臨終場面で、ドクターが介護者と一緒に手を握り合って桜の花びらを一人旅立つ本人の上に散らした話など、誰が聞いても目頭が熱くなるような話です。
 名田庄村のあるおおい町は、在宅で亡くなる人が多い。同じ福井県でも飛びぬけて多いらしい。・・・その要因の一つは、中村さんのような当事者の気持ちに寄り添う医師が居るからだということが分かる。
 つくづく、在宅で最後まで介護を貫いていくことの意味を感じさせられる話でした。
 人が亡くなる時、最後は病院でという経路が多い現実であるが、本当にそれで良いのか?一人一人が自分や家族の問題としてもっと考えてみても良いのでは?
 どちらが良いのか?それを決めるのは、一人一人の自分でありあなたですから。

◎次に、やなせななさんのトークと歌のことです。
想像以上に、大人びた幅のある声量でした。彼女の歌を、目を閉じて聞けば、きっと心の扉がそっと開かれていくような気持ちになります。
 住職さんだから、きっと”坊主”くさい話もあるかも?と勝手に決めつけていましたが、最初に聞いた曲の幻想的とも云える歌声に引き込まれて知らないうちに”やなせワールド”に入ってしまっていました。
 彼女は今30代後半とのことですが、歌を歌って全国を渡り歩かれ、とりわけ東北の震災で深刻な被害を受けた地域への活動をずっと40回以上継続されているそうです。
 単なる慰問活動というよりも、深く傷つき身近な人達がこの世から突然去ってしまったことを受け入れられない被災者の人達と、しっかり向き合っておられることが伝わりました。
 その象徴的な話として、あるミニコンサート会場で、歌を歌っていたやなせさんに対して、突然年配の女性が大声をだし「ここは、大勢の人が亡くなってみんな悲しんでいる場所や。歌なんて歌って何してる!坊主やったら海に向かって念仏を唱えるべきだ?」と抗議の声が上がったそうです。
 このハプニングには、さすがにやなせさんもびっくりし、歌うのを止め、静かに海に向かって膝間付き念仏を唱えていたそうです・・・

 その後、どうされたのか?は分かりません。また、歌を再開されたのか?その女性と手を握り合って思いを共有されたのか?想像するしかないです。
 でも、この経験を通して、やなせさんはさらに被災者の悲しみを深く理解することが出来た。そして、継続して歌を通して思いを届ける、音楽を通して人と人とを結び付ける活動を強めて行かれた。

 支援活動の宣伝ですが、「負けないタオル」の販売活動も挿話の一つとして紹介します。通常のタオルよりは縦に短めのタオルですが、頭に巻いたり首に巻いたりはやり辛い長さのものです。・・・しかし、気持ちが負けないタオルなのです!?
応援歌としての「負けないタオル」の歌は、きっと被災者の人を含めて、沢山のボランティアの人達にも毎日うたわれている曲だということが伝わりました。

 残念ながら、販売行列が一杯なので、今日はその「負けないタオル」を買えませんでしたが、なかなかのアイデアです。

 やなせさん自身、思いもよらぬがんの病に若くして侵され、手術を受けて元気を取り戻し、現在の活動をされています。
「私も癌になって、死と隣り合わせる辛さを知ったから、悲しんでいる人たちのことが理解できたのです。ですから、このお腹の傷は私の心を開いてくれたしるしなんです」と話されていた。

 今日の記念講演、特別講演は、ケアマネとしての立ち位置を深く感じさせられた良い内容でした。有難う。