東京都の『成年後見人』一般公募開始に一言申す。

認知症、知的障害などにより判断能力が不十分な人を対象に、財産管理や契約などを代行する『成年後見制度』があるが、それを実際に行う人である『成年後見人』を市民から一般公募して、養成しようという計画が実施されることとなった。



近年リフォームの詐欺、訪問販売による悪質な詐欺などの事件が頻発して高齢化社会を向かえるにあたって不安が先行している。現有の後見人では、とても多くの御年寄りを守ることが不可能になってきている。

現在ターゲットとされているのは”団塊の世代”であるという。ここ何年かで多数排出される定年世代に狙いを定め、『成年後見人』を急遽養成して、増大するニーズに答えようとする狙いである。



全国でも始めてのこの養成が、果たして効果を発揮するのかどうか、注目されるが、若しこの方式が有効という事がはっきりすれば、恐らく全国の市町村でも実行されることとなろう。この事は、有意義なことではある。



例えば、大阪府を例に取ると、『成年後見人』を希望する人があっても、順番で申込を叉なければならないし、何ヶ月かの期間待機する必要があるという。肝心の必要なときに、直ぐに担当者を派遣してもらったり、契約を交わしたりが出来ないのが現実である。・・・何せ、各区に数人の担当者しかいない現実では、とても沢山の御年寄りからの申込に答えられないのが現実であるという。・・・此れでは、幾ら制度の趣旨は良いとしても、地域の人々の依頼に答えられる体制とは云えない訳である。



大都市では益々認知症の御年寄りが増え、『成年後見制度』や、”金銭管理”を依頼出来る”安心サポート”などの需要が増してゆくことは確実である。その場合、問題となるのは、スタッフの確保を如何するのか?である。人を雇うにしても人件費が必要となることもあるが、兎にも角にも、後見人となる人を探すことが先決となる。このとき、沢山の高齢者の予備軍?を無駄にほっておく手はない。

60代の健康な御年寄りならば、まだまだ行動的に仕事が出来るわけであり、労働意欲も豊富である。これらの年代から意欲的な人たちを”成年後見人”として養成できれば、所謂”老老介護”の明文も功を奏する訳である。



東京都の場合、まずは50人を養成すると云っているが、この程度の人員で問題が明るい方向へ進むのかどうか疑問でもある。もっと大胆に、500人くらいの養成をしてゆくべきだと思う。2000年に、東京では126万人(70歳以上)の御年寄りが、2020年には、242万人に増える。此れだけの御年寄りに対しての成年後見人を、50人程度増やす計画を立てても、恐らく”焼け石に水”だと思う。

社会福祉の計画というものは、もっと、先々の状況を見越し計画を経てるべきであり、万全の対策で計画して欲しい。2004年に、制度利用希望者が、2021件を数えたと云われているが、しかし、本当にそれを必要としている人は、その何倍も存在する。・・・制度の網から漏れて公的な見守りから外れた御年寄りの中から、様々な悪しき詐欺などに遭う犠牲者が増えているのである。御年寄りの被害は、ある意味では、社会における高齢者保護制度の貧困を現している。・・・このことを踏まえるならば、今回の東京都の公募開始は、進歩的な意味を有するとしても、もっと大胆に行う必要を感じます。全国の自治体でも、早急に成年後見人の公募を開始すべきであると思います。