必要な身体拘束ってあるのかな?

身体拘束は、人の自由を奪うものです。それが正当化されるのは、例えば犯罪人を捕まえたりするときは、一般的には正当とみなされます。また、凶暴な動物が人間社会に進出して現れたら、その時、捕獲を目的に捕らわれることについては、誰しも妥当と認めざるを得ません。しかし、こと人間社会では、何の理由か明確にされずに人を拘束して自由を奪うことがあってはならないのです。同時に、どうしても拘束せざるを得ない理由があるときは、已むを得ず拘束をする理由付けが必要でしょう。その理由が明らかにされていなければ、やはりそうした身体拘束は不当です。



厚生労働省では、「身体拘束ゼロへの手引き」の中で次のように規定している。

○やむを得ず拘束する場合の手引き

1・職員個人ではなく、施設として判断できるよう、事前にルールを定めておく。

2・本人や、家族に詳しく説明をし、十分な理解を得るように努める。

3・要件に該当しなくなれば、直ちにやめる。



こうしたガイドラインがあるにも拘らず、実際には施設では身体拘束が行われているのが実情です。それも、3割は、生命などの必要なしに行われたものであるとのアンケートからの統計がある。

この調査は、厚生労働省が、今年、全国5800施設からの回答で明らかになったものです。

今までに、一切身体拘束を行ったことがない、と言い切った施設は、15・2%だけであった。そして、緊急時と、一定の手続きを前提に容認する、とした施設が、60・7%であった。また、判断をここの担当者職員に委ねている、と答えた施設が19・1%あった。

拘束する場合の手続きを定めているは、66・4%で、個別ケースごとに協議するため定めていないが24%在った。また、現場の判断にまかしている、と答えた施設は4・4あった。



拘束の手続きを定めているところでは、拘束率がゼロのところが、36・2%ある。それに対して、個別ケースごと協議する、ではゼロ拘束率は26%であり、現場の判断で、という施設では、18・5%と低かった。

やはり、きちんと拘束に対して対応を明示している施設のほうが不必要な拘束を防いでいることが現れている。



拘束しなければならない理由で多かったものが、人手の少なさです。

特に、夜勤においては、最小職員数で対応するために、こうした身体拘束の可能性が高くなり、一人あるいは限られたスタッフの判断がポイントになる。この時、現場スタッフの判断が重視される遣り方では、結局、身体的な拘束を避けられない現実があるようだ。



この調査は、現実の状況を一定程度著しているが、実際のところは、もっと多くの身体拘束のケースが埋もれている可能性がある。



介護報酬がすり減らされて、援助する人の手がこのまま減らされるようでは、身体拘束に対する懸念も、また強まらざるを得ないと思います。

根本的には、余裕を持った人員配置がされないと、どこまで行ってもこの手の問題はなくならないでしょう。



また、研修や施設でのルール作りもされる必要があり、職員間の意識改革も不可欠でしょう。このためには、スタッフの研修体制が、強化される必要があります。



こうして考えると、身体拘束の撲滅は、行政の制度改革と、働くスタッフの意識改革が連動する必要があります。施設により差があると思われますが、良質の介護を目指すからには、身体拘束をなくすことが一つの目安となるはずです。

如何したら、これが出来るのか?逆に如何することが悪い結果を生むのか?もっと様々な議論とケース検討が積み重ねられ、サービスの質が高められるようにしてほしいと思います。