N.チョムスキー教授の言葉に耳を傾ける。

イラク開戦当時から、ブッシュ政権を批判していた米国マサセッツ工科大教授ノーム・チョムスキー氏は、先日M新聞記者と会見した。その会見の模様が紙上に載っていたのですが読まれた方もいるかと思います。以下に彼の発言趣旨を纏めてみたいと思います。



▽・・・イラク戦争を総括すると。



ニュルンベルク裁判で裁かれた侵略行為と同様である。

米英両国によるイラク攻撃は国際的な戦争犯罪と言える。

何千(何十万?!)もの人を殺害し、拷問し、国家を解体し、インフラを壊滅させた。・・・これを戦争犯罪と呼ばないのなら、人類は何を戦争犯罪と呼ぶのか?」



・・・かって、60年前、日本の広島に、長崎に原爆が人類史上初めて投下され、数十万人の民間人が一瞬の内に殺戮され両都市は放射能により生きるもの全てが破壊されました。その惨状は、口では言い尽くせないものです。広島の資料館には残された原爆の凄まじい破壊の証が残されています。(・・・未だ、見ておられない方は、ぜひ一度自分の目で確認して頂きたいと思います。)

この、大虐殺について、(アメリカという国家と)多くのアメリカ人は、未だに「必要な攻撃であった。二つの原爆投下により、多くの人々の犠牲を食い止められた?」と言う解釈をしているのです。

しかし、このような見解に対して、単に人道主義と言う見方ではなく心のそこから核戦争の恐怖を感じ人間の戦争行為の愚かさを痛感するのは私だけではないと思います。人をどれだけ傷つけ、殺戮してもその行為を正当と肯定する・・・こうした判断と言うものは、どんな高貴な理論と戦略で練られており近代兵器を屈指するものであろうと決して許されるものではないと信じます。

大量殺戮を正当化する考え方は、チョムスキー教授が指摘されるように、まさしくナチス戦争犯罪と同質であると思います。・・・こうした指摘は、何も米国だけではなく、今まで戦争を聖戦としてつ遂行してきた多くの列国に対しても言えることです。(これは、戦前の日本も同罪です!)





▽・・・ブッシュ政権は先制攻撃論を堅持しているが・・・どう思うか?



イラクで失敗しいて、今度はイランを先制攻撃論で脅している。

ブッシュのやり方は、何時でもどこにでも大規模な軍事攻撃を行うというものだ。

この遣り方が、結果的にはロシア・中国の軍拡を誘発している。世界の緊張を高め核戦争勃発や放射能爆弾の使用に繋がりかねない。」



・・・アメリカに害が及ばないのなら、他の国に対しては何でもやる。中東の敵国の子供たちが泣き叫び、女たちがもう止めてと叫ぼうがその声に耳を傾ける事は無い。要するに、アメリカ人以外は、どうなってもいい。自分たちだけが幸せで楽しく暮らせば良い・・・こんな身勝手な考え方を誰が容認できるでしょう?もともと、ブッシュ政権には民主主義のかけらも無いのです。自分たちと、考え方をことにする人々、宗教が異なる民族を理解しようとする姿勢が決定的に欠如していると思います。



▽・・・依然40%近い人々がブッシュ政権を指示しているが?



「政策の失敗と、支持率の低下は直ぐにリンクする訳ではない。・・・これはナチスヒトラーが良い例になる。加えて、ヒトラーの時代とは比べ物にならない”政府による周知な宣伝工作”が行える。この政権による情報操作と言うものを重視する必要がある。メディアを使った宣伝工作により、米国民は、フセインをはじめとしてイスラム勢力を恐れる様になったと見るべきである。」



・・・確かに、情報操作の権限は、時の政府や財力のある勢力がイニシアティブを握っている。民主的な方法で幾らお金の無い市民が手作りの運動を繰り広げても、マスコミが取り上げない限り、土に沁みこむ水のように、遠くの人にはなかなか情報の発信が見えにくい。ところが、テレビやインターネットで情報が大きく取り上げられると、1日にして世界にその情報は発信され行き届くことになる。

・・・この意味で、政権政党や、巨大政党による、情報の独占や規制と言うものを軽視するととんでもないことになる。



▽・・・米国では新たなテロが懸念されているが。



ブッシュ政権の政策はテロを誘発しているだけだ。

その政策を改め、テロリストの不満の源泉を見つめ、見極め、不満解消に向けた対策を練ること、それが問題解決への近道だ。」



目には目を!歯には歯を!これは昔のハムラビ法典の考え方だが、ブッシュの取っている政策は目には何百の首を!歯には、村全体の破壊を!である。疑わしいと思うイスラム人は、全て撃ち殺す権利が、米軍のどこにあるのか聞きたい。軍事要員に、イスラムに暮らす人々の国土を踏みにじる権利が本当にあるのかどうか?こんなまともな疑問が意味を成さない現在の中東情勢をまともな状態とはとても呼べない。・・・だから、まず米軍とそれを指示する国家勢力により編成された占領軍が撤退することが必要だと思うのです。それをきっかけとして、武装した抵抗勢力も撤退する道が開いてくる。

内戦状態になりつつあるイラクを、平和的なプロセスとしてその行程を描くならば、そのやり方しかないと思うのです。そもそも、大量破壊兵器の存在と言う、「米軍の介入の御旗」は失墜しているのですから。



今回、N・チョムスキー教授の話を聞くと、イラク戦争における問題の本質が何であるかが、よく頷けるのです。物事の本質は、そんなに複雑なものではない。何が真実で、何が虚偽であるのか?これを見抜く目を、われわれは、きちんと磨いておく必要があると思います。