ヤヌス氏のノーベル平和賞受賞に思う。

06年のノーベル平和賞が決まったバングラディッシュという発展途上国で、女性たちの自立的な活動に活力を与え、貧困がもたらす経済的弊害を取り除くことに力を尽くしたことを最大の功績と指摘し、今後もイスラム社会の中で地道な「マイクロクレジット」を広めることに希望を託した。。





83年、ユヌス氏は一人で無担保の小額融資を実践し始めた。農村の女性たちにはこうした資金が、生活を稼ぎ出すためのきっかけとなり計画的な返済と労働を身に付けることにより、貧しさに打ちひしがれていた受身の生活からの転換を促すきっかけとなった。

女性たちの働く意欲、資格や技術の取得を積み重ねることにより、社会参加への大きな原動力が生まれている。



ユヌス氏の運動は、最初は小さな小口の資金融資でしかないものと見えた。貧困にあえぐ人々には焼け石に水を打つような善意でしかないと馬鹿にされた。

しかし、現実には、融資を受けた女性たちの自覚と協力を引き出すことにより、ただ借りるだけの資金貸与に止まらない自立への支援が運動となった。何故、この運動が事業として成功したのかを、私たちも学ぶ必要がある。



貧困層に資金を貸そうとしない既存の銀行などとは事業の出発としての理念が違った。

ただ、利息を計算して返済を見込むことに止まらず、借り手の未来の生活意欲と設計がともに描いてゆけるビジョンを共有する理念があったからここまでこの組織は拡大した。

今、バングラディシュでは、2226支店を持つ巨大銀行としてグラミン銀行は社会に定着した。事業を成功させた総裁として、一人ひとりのスタッフへの深い信頼関係が築かれているという。部下やスタッフを「同僚」と呼び、すすんで相互の意見交換を惜しまないといわれている。

彼の事業は、莫大な親から譲られた資金を持って開始されたのではなく、27ドルの融資から始まったといわれている。小さな資金融資から継続して小口の融資を積み上げ、今日のバングラディシュを代表する金融事業所として成功させた意義は大きい。



ヤヌス氏の事業から、さまざまな教訓を学ぶことが出来るが、一番重要なことは彼の事業理念であると思う。貧しさゆえに、カースト制度の狭間の中で悶々と古い制度に埋もれている女性達の活動のきっかけ作りを広げた意義は大きい。

貧しいということが能力が無い事のように思われていた。

しかし、本当はそうではなくて資金にアクセスする方法がなかっただけであることを証明した。女性たちは自覚し学び、自らさまざまな仕事につく自立心を身に付けていったのです。このことが持つ教育的な側面が大きい。



今回の受賞賞金、1000スウェーデン・クローナ(約1億6500万円)はユヌス氏と銀行の両方が分け合い受け取るという。きっと、この資金も、又有効な資金として、バングラディシュの人々の自立資金として有効に活用されることでしょう。

今回の平和賞受賞が、事業の理念に影響されたさまざまな自主的な活動を益々活性化させることでしょう。グラミン銀行の更なる発展と、又新たな自主的な運動が民衆レベルで進んでゆく事を期待したいと思います。