覚悟

 

著者:戦場ジャーナリスト橋田信介

著作名:覚悟

出版:中央公論新書





2004年5月27日、夫の橋田信介は甥の小川功太郎と共にバクダット郊外で襲撃され、死亡した。・・・後の調査により米軍の軍事スタッフと間違われて銃撃されたことが判った。

橋田さんがイラクに赴いた直接の動機は、モハマド君の眼の治療を日本で行なわせるために、最終的な詰めを行ない本人と家族を日本に招き入れる手はずをするためであった。

・・・ところが、不幸にも武装部隊の待ち伏せ攻撃を受け、車ごと蜂の巣にされた後橋田さんの乗っていた車は火災を発生し、炎上した。・・・既に息絶えていたことは分かったが橋田さんの遺体は検死が出来ないほどの損傷を受けていたという。



幸子さんは、報道カメラマンの妻として最悪の出来事に見合うことになった。

覚悟は出来ていたとはいえ、こんなかたちで夫の最後を見送らなければならないことに愕然とする。崩れそうになる心を最後に支えていたのは息子の大介さんの存在であったと言う。夫は遠いところに一人旅立ってしまったとしても、彼女には最愛の息子がそばにいる。悲しみに明け暮れて暗い顔をしていたのでは、亡くなった夫もきっと不憫に思うに違いない?・・・こう考える幸子さんには、沢山の人達が声をかけて、ともすれば後ろ向きになろうとする自分を勇気付けてくれた。



夫が遣ろうとした、モハムド君の治療が、多くの人達の善意により実現し、イラクの人達を励ます救援活動として実現した事がきっかけとなり、幸子さんは次なる目標に向って進んでいる。

イラクの少年達が親がなくても暮らしてゆける孤児院の建設のためのカンパを進めている。・・・イラクでは、多くの大人達が傷付き亡くなり、親のいない少年少女が沢山いると言う。・・・そうした子供達が安心して育ってゆくための家を建設すると言う目的を掲げて、カンパ活動が繰り広げられています。



イラクでは、承知のように、ジャーナリストが既に50人以上亡くなっている。世界各国から報道のために遣ってきた人達が、戦闘に巻き込まれ命を落としている事はまことに悲しいことですが、何故こんなに多くのジャーナリストが死ななければならなかったのか?ぜひ検証していただきたいです。



分かり安い文章にて書かれた本書を、ぜひ一読していただき戦場ジャーナリスト橋田信介の裏面と、夫婦の厚い絆とは?を学ばれてはいかがでしょうか?