だから、あなたも生きぬいて  

 

著作名: だから、あなたも生きぬいて  

カテゴリー: 評論・エッセイ    

著者名 :大平 光代  

発行年:(西暦) 2000  

出版者 :株式会社講談社   

 



かって、「虐め」の渦に蹴落とされて、死を選んだ少女が、その後極道のどん底まで経験した。・・・普通なら、そこから這い上がる者は居ない。落ちるところまで落ちて、自ら社会の裏でゴキブリの様に生きる他方法がないはずだが、彼女は違った。

・・・とある知人の根気強い働きかけ、声掛けに反応して、もう一度人生をやり直す勇気を持つ。



宅地取引責任者、司法書士司法書士。・・・中卒の彼女が、死に物狂いで勉強して次第に資格を取ってゆく。・・・途中、挫折しそうになって引き返そうとすることが幾度とあるが、そのたびに彼女の周りにいる知人達が、応援する。・・・始めて経験する、温かい人達の言葉に支えられ、ついに中卒と云うハンデを克服して司法試験に合格した。之は、ある意味驚くべき快挙であろう。之こそが、本当の「復讐だった」と思います。



何故、彼女は夢を叶えられたのか?

・・・之には幾つかの理由が上げられると思うが、最大の要因は、彼女が若くして全てを失っていたからだ。・・・彼女の絶望がそんなにも深く、多くの心無い人達により傷ついた心が、心の底で真実を求めていた。・・・この彼女の叫びのような声に、人の温かい思いが重なり、もう一度立ち直る事を決意させたのだと思う。



彼女がこのように立ち直り、両親とも親子の絆を取り戻せた事はある意味、奇跡かもしれない。もし、彼女が、途中で挫けて挫折し、生まれ変わるための必死の努力を怠ったなら、今の大平さんはいなかっただろう。

大平光代という人物が、こうして、第2の人生を歩んでいるのは、人知れず努力に努力を重ねた彼女の大きな決意と意思の結果であろう。



この本は、中学生でも小学生でも読めるように漢字には全てルビ入りである。

之は、おそらく小中学生でも、読む気のある者が読み安いように考慮してあるのだと思う。・・・「虐め」と言うものは、社会の中では、恐らく今も存在していると思う。陰湿な虐めの中で、苦しめられて、孤独の中で死を選ぼうとする青少年が今も存在している事を考える時、大平さんのこうした経験が生のまま描かれている本書が、読む人の心を「うつ」はずである。一人悩み、誰からも温かい声をかけてもらえず、辛い気持ちに沈んでいる若者達に、「だから、あなたも生きぬいてください」と今も著者は言葉を投げ掛けているように思う。



そうです、人生を遣り直せるのも、潰すのも、結局あなた自身、私自身の生き方に懸かっているのです。

憎しみや、恨み、怒りだけではない人間の心の奥を、まだまだ沢山見てゆくことにより、人の人生の中での温かい喜びを、互いに共有してゆきたい。・・・私も、そう思いました。