ガザに平和とパンと笑顔を。

no-mu2008-12-31

イスラエルの占領地の実態を知る・・・典型としてのガザ地区の実態は?
12月27日からのイスラエルによる空爆を毎日受け続けているガザ。・・・報道では犠牲者は360人を超えており、戦闘員以外の一般市民の犠牲者が深刻な被害に遭っていることが分かる。イスラエル軍は、最新誘導ミサイルにより、ハマス棟の軍事施設に限定された攻撃だとしているが、実際にはガザに住む市民が巻き込まれて被害を受けることに対しては何らの躊躇もしていない。外国人等が巻き込まれようが、自分達の作戦の変更はないと断言しており、今回の攻撃が計画されたガザに対するイスラエルの反対勢力根絶を画策した軍事行動であることが明白となっている。

一体ガザ地区は何故こうした攻撃を受けるに至ったのか?ガザを支配するハマスが登場した背景には何があり、ガザの市民137万人の安全と生存は誰が保証するのかを共に検証していきたい。このことの考察が、イスラエルパレスチナという敵対した民族と宗教の関係を把握する糸口になるのではないかと考える。それは、ガザの置かれている状況が、他の西岸地区等の状況の本質と同一線上に繋がっていると想定できるからだが、歴史的には極めて膨大な他民族の登場を刻んでいる地区に位置する特殊性がある。
そもそもパレスチナや現イスラエル国家の地域が、どの民族固有の生活地域であるのか誰も断定することは出来ない。むしろ多くの国家がその土地に定住しては解体し、その都度地域の住民たちは近隣国家等に離散し、占領国家民族に従属してきた歴史がある。こうした特殊な歴史を正しく把握することにより、現在の紛争の解決の糸口を見つけだすことが可能となると信じる。

ガザの現状を知るために。
ガザに住むパレスチナ人は、119万人、ユダヤ人は6700人(2000年11月現在)とされている。・・・これを人口比にすると、99.4%がパレスチナ人ということになる。
イスラエルの英字新聞「エルサレム・ポスト」が1986年にまとめた占領地報告では、以下の統計的数字が示されているという。
圧倒的多数のパレスチナ人からどんどんと地が取り上げられている。・・・ユダヤ人入植地建設の為に土地の接収が進められて当時ガザの3分の1はイスラエルのものとなってしまった。また漁場も4分の3はイスラエルが占有してしまった。漁民の操業時間も短縮されたという。  
産業分野ではどうか?ガザで生産されたものをイスラエルで販売されることが禁止され、逆にイスラエルの商品はガザにて販売可能となっている。また、外国からのガザへの資金提供も禁止され、工場の建設等も認められていない。こうなると、ガザの住民たちはイスラエル内の産業に雇用されて、日雇労働でしか食べていけないようになっているという。これは一方的な商品流通制度が敷かれた状態であり「経済的占領」以外の何物でもないだろう。・・・この経済的占領体制はヨルダン川西岸においても同様であるという。

パレスチナ人たちの雇用待遇はどうか?・・・これについては一般のイスラエル人の賃金の1から2割しか支給されないという。イスラエル内の労働現場に行くまでに毎日一定の通行料金も取られている。長時間をかけて仕事を済ませまた通行料金を払ってガザの自宅に戻るわけである。パレスチナ人たちが夜間にイスラエル領内に泊まる事は禁止されており、勝手に宿泊すると逮捕される。
ガザに於いてオリーブの樹1本を植えるにもイスラエル政府の許可がいるという。また申請してもほとんど許可を貰えないという。パレスチナ人は畑から石一つを拾い出すことさえ許可なしにはやれない縛りを受けている。・・・一体このような前近代的占領政策が堂々と押し付けられている地域が地球上に存在するという事実を私たち日本人は正しく認識しているのだろうか?
まだまだある。井戸を掘る権利も奪われている。当然水不足が生じ深く深く掘り続けるうちに地下水が海水で汚染されることになるという。こうなると飲料水には使えない。やむなく農業用水として利用しても、それがガザの砂漠化を加速化させる原因となる。
一方ユダヤ人入植地における井戸の採掘は許可されておりいくらでも使える、当然ユダヤ人農業とパレスチナ人のそれとの生産効率は大きな格差を生み出してしまうこととなる。
一昔前、日本の進歩的な知識人はイスラエルキブツを理想郷と想定して現地に住み着き、少なからず共同生活の在り方に理想郷を見出した時期があった。現在もキブツに住み着いている日本人も勿論居るだろう。しかし、キブツという村が其処に住み着いていたアラブ人やパレスチナの村々の住人を追い出して、時には軍事的作戦により虐殺を伴って戦後イスラエル国家建設の名のもとに武力的に作られてきたことを忘れてはなるまい。

要するにパレスチナ人たちの人間としての当たり前の権利は全て奪い去られている現状がある。これを否定する人達は、現実のガザ、パレスチナ自治区とその周辺を正しく見ているとは言えない。シオニストたちは、彼らの行動の正当性を主張するが、現実にイスラエル国家がパレスチナ人抑圧の元で成立していることはどんなに隠蔽しても隠しおうせる事ではないだろう。

抵抗運動について少し述べてみれば、子供がイスラエル軍に投石をした場合そのパレスチナキャンプと学校は閉鎖され石を投げた本人は約1年近くの刑に服さねばならない。
子どもに対してもこのような厳罰を科するわけだから、もし大人と見なされる者が同じことをした場合、どういうことになるか?想像がつくだろう。
イスラエルでは、パレスチナの地図を他人に見せただけでもパレスチナ人は1年の勾留を余儀なくされる。・・・これは北朝鮮においても同等の処罰がされるらしい。日本では考えられないことだが、戦争当時日本では国内地図をもし外国に持ち出したなら同じ処罰を受けることになっていたことも添えておく必要がある。情報というものが自由に扱えない社会は、必ず専制政治や軍事的な独裁が敷かれている制度を伴っていることが分かる。
万が一自分の土地をある日突然接収されてもパレスチナ人にはそれに異議申し立てをする権利が認められておらず、アラブ系の裁判所は全くの無力化されているのが現状だという。唯一のイスラエル軍事法廷は、当然のことながらパレスチナ人たちの権利を守るものではない。こうして、イスラエルの当局は、絶対的な政治的・文化的・司法的・軍事的権限を有しておりガザの市長ですら何時でも解任する権限を持つという。

こうしたことが、ジュネーブ協定に違反し明らかに国連憲章で謳われているパレスチナ人の自立する権利を阻害しているにも拘らず、誰もそれを止めさせることが出来ていない。
イスラエルの理屈は、ガザに対する「管理体制」であり「占領体制」ではないから協定には違反していないと強弁している。
しかし、イスラエル政府のこうした見解が客観的な見地から判断していかに不当なものであるのか?明らかであろう。

第2次大戦時にいまだかってない迫害をナチスから受け、ユダヤ人に対する国際的な同情の眼は深かった。・・・しかし、今日のイスラエル国家はナチスにより受けてきた人権侵害と同等の迫害を近隣パレスチナ人たちに向け続けているのではないか?
こうしたやり方に対して、国際世論の一員として私たちも黙っているわけにはいかない。

イスラエル国内にも、今回の軍事行動を非難し、行き過ぎた武力弾圧を止めるべきだという考え方を持つ人たちが居ると思う。しかし、まだ彼らの声はイスラエル国内から聞こえてこない。好戦的なシオニストやアラブパレスチナ人に対する排他的な宗教観を持つ人たちが圧倒しているように思う。

私達の声をもっと上げていかねばならないと思う。
一部の軍事的な強権主義を打ち砕くためには、より多くの世界の市民が非軍事的な方法での問題解決へのプロセスを明らかにしていく情報発信中から対話が進んでいくと思う。
もちろんイスラエルの背景にはアメリカという巨大な軍事的国家が控えているし、アメリカの後ろ盾があるからこそイスラエルはどこまでも強権的な軍事支配を貫こうとしている。
オバマ政権が果たすべき、中東平和への役割は大きい。もし、ブッシュのようにアメリカ資本の利益と自国の利害だけを優先するような政策に終始するならば、アメリカという国はどこまで行っても中東問題の解決を導く役割を果たすことは出来ない。逆に、オバマイスラエルに対して厳しい平和的リーダーシップを発揮し、入植地からの撤退政策を具体化させることに道を切り開けるならばパレスチナ国家とイスラエルとの共存の可能性は開かれていくのではないか?
いずれにしてもこの問題はあまりにも流されている地が膨大であり、傷が深く時間を要する紛争テーマであると思う。
今回提示させて頂いた数字や事実は、主に広河隆一氏の著書、「パレスチナ」から抜粋させて頂いたものです。もし誤った解釈や判断があるとすれば、私の至らなさからの誤謬です。著者の広河氏に対しては、その40年以上のジャーナリストとしての活動と今現在も日本とパレスチナイスラエルを結ぶ情報収集を継続されている日本人として、心から尊敬の念を抱いていることを添えておきたいと思う。


 *写真は、パレスチナこどものキャンペーン(NPO)より抜粋させて頂きました。サイトはこちら→ http://ccp-ngo.jp/