今春、介護労働者の待遇は果たして改善されるのか?

4月より、介護事業の報酬単価を決める介護報酬単価が変わります。
果たしてどの様に改変されるのか?それは、すでに昨年12月の26日の介護給付費分科会の提案で出されている。・・・ご存知のように、介護保険初めての引き上げ案が出された。
ところが、厚生労働大臣の肝いりで作られたこの「3%引き上げ案」は実は大きな問題が内包されている。
単価が3%一律に引き上げられるのなら、この上げ幅は少なすぎても間違いなく報酬が引き上げられることになる。
しかし、実はそれがからくりなのだ。3%といっても、居宅部門で1・7%、施設部門で1・3%上げるので、合計が3%ということだという。・・・これっておかしいですよね?
これは、3%引き上げじゃないのです。平均では1・6%になるかならないかという実態です。
まだ問題がある。ベース報酬がほとんど上がらず、(一部訪問介護の短時間身体介護や生活支援の単価が引き上げされる)その代わり多くの新設加算項目が乱立する・・・?というやり方なのです。
こうなると、報酬を上げるためには、可能な加算をクリヤする努力が求められるわけです。
かくして、春からは各介護事業所は、いかに加算を取り易い体制を作り加算の取れる仕事を進めるのか?に躍起となる競争が待ち受けているのだ。
介護労働者の資格がキャリアとして認められる目安になり、介護福祉士の資格を持つ者がどれだけを占めているのか?や、3年以上の勤務経験を持つ常勤者をどれだけおいているか?などがその事業所の体制加算項目として算定されるようになる。
そうなると、資格を持たないスタッフは、賃金においてもハンディーを負うことになりそうだ。一方資格を持つスタッフが果たしてどれだけの資格手当をつけられるのか?これには全然保証がない。

一つ改善が施された部門もある。
それは居宅介護支援です。今まで、担当利用者の逓減制が敷かれていたので要介護利用者40人以上を担当すると、それ以上の担当については一律全て4割が削られることになっていた。60件以上の場合は何と6割が削られることに決められ、こうなると当然、ケアマネの仕事は40件までというのが定説になってしまった。
・・・わざわざ、報酬を減らすために多くの利用者のケアプラン作成に手間をかける必要はみとめられないからです。
しかし、この評判が悪かった逓減制が緩和されて、今度の春からは40件までは今まで通り、40件を超えると超えた分のみ2分の1に減らされ、60件を超えると40件以上の分が3分の1となることに替わる。
40件担当分は保障されることで、居宅介護支援の赤字財政を少しは改善させることを狙いとされているという。
果たしてこれで居宅介護支援の事業が赤字財政体が脱却させることが出来るのか?
細かいその他の新規加算を取ることにより、どれだけの収支改善が図れるのか?
各民間事業所は、今盛んに算盤を弾いているが、どう考えても居宅介護支援の黒字化は出来そうもない。
そうなると、居宅介護支援の独立採算は、まだ遠い夢となりそうです。
介護保険の要はケアマネジャーだと大いに持ち上げられて新設された専門職ですが、実際には独立型居宅事業所は、全体の1%にも満たないのが現状です。
儲かる仕組みになっていないということは、赤字覚悟でしか事業展開が出来ない、ということです。これでは、保険の要という謳い文句が泣くというものです。

最後に、先日私が属している組合(全国規模のクラフトユニオンです)の掲示板に発表した意見を転載しておきます。この声は、全国の全ての介護労働者に届けたいと思う。

 『今回の報酬改定を改めて整理しましょう。
2000年の介護保険以来初めてのプラス改定であることは確かですが、(今までは、散々減らし続けてきたのです)
しかし3%アップというのは正確ではありません。

ベースとなる単価が3%上がるのであれば、話は簡単ですが、殆どベースは上がらないのです。(一部、訪問介護の短時間等で引き上げがありますが)
承知のように、施設サービスで1・3%、居宅サービスで1・7%上がり、二つを合わせて3%ということです。
ですから、両者を合わせて平均1・5%のアップという方が正しい解釈です。(ただし、両サービスの介護サービス全体から割り出されるパーセントが違うので、正確には複雑な計算が必要となる)

こうして、高々1・5%前後の引き上げ幅でどう効果的な引き上げ効果を出すのか?ここにおえら方たちは知恵を絞ったというわけです。
そして、考案された報酬改定は、やたら加算の新設ばかりが目立つ複雑改定となった。

「加算をたくさん取れるように努力をすれば、収益アップが図れる可能性があるのでは?」と考える人もいるでしょうが、よく吟味するとそう簡単には加算が取れないようになっている。
・・・4月以降になれば明らかになるだろうけど、加算取得の為の手間が飛躍的に増えて、ますます分かりにくい報酬体系となること間違いなしです。

また、利用者に「介護保険は1割負担です。」と説明しても今後は十分ではなくなります。「◎◎加算が何単位増えます。▽▽加算が何単位追加となります。・・・等々の余分な説明が必要となり、合計で自己負担が何単位となります。」ここまで説明をする必要が生まれるのです。
単価の引き上げがすべて利用者負担に繋がるので、利用者からはきっと「加算なんていらない!ややこしい説明は聞きたくない」と苦情が出る筈です。

やれやれ、介護報酬ベースを引き上げない加算方式は、新しい負担を説明するサービス事業所のスタッフやケアマネジャーに大きな苦情を発生させる要因となるのです。
(本当は、厚生労働省のお役人や介護給付部会のおえら方に説明義務がある筈なのに…)
何故、キチンと介護報酬ベースを引き上げて、それが確実に事業所の報酬アップに繋がり、そのことが人件費引き上げへと直結する方式を取らなかったのか?このことを問わなければならないと思う。

こう考えていくと、事業者の立場からは4月以降の賃金引上げに対してますます消極的にならざるを得ない「改悪報酬改定」であることが明らかとなりそうです。
こんな改定誰が良しとする。こんな知恵を誰が仕掛けたのか?
責任者出て来い!

個人的には、今こそ介護労働者の怒りの声を集めて、社会の全ての人達に働きかける行動に立ち上がるべきだと考えます。
1回の署名で駄目なら2回3回とやり続けるべきだし、デモでも集会でもどんどん行っていくべきだと思う。

皆さん、もう大人しく我慢しているときじゃない。

行動力が社会の流れを変える、私はそう感じています。』

皆さんは、どう考えられますか?

この写真は?現在の季節の写真ではもちろんありません。・・・昨年の6月に撮った、緑豊かな季節の朝顔です。良いですね緑の季節は。