介護スタッフの待遇改善はどこへ行く?

no-mu2009-03-22


昨年の12月26日、厚生労働省介護給付部会の答申が決まり今春からの介護保険報酬改定案が発表された。内容について、既に周知の通り3%(居宅1・7七%、しせつ1・3%)の報酬改定だが、実際にはこれまでの2回の報酬切り下げ分を補填することも出来ないアップとなっている。
問題は、果たしてこのような上げ幅で介護労働者の待遇改善が図れるのか?にかかっている。
今回の厚労省肝煎りの報酬改定は、単なる引き上げではなく劣悪化する介護スタッフの待遇を具体的にどう改善するのか?というテーマを中心に考えられてきた。
一般製造業の労働者賃金に比べて、介護労働者の賃金は月額にして10万円ほどの格差がついていると言われている。・・・年額にすると150万から200万は低い待遇です。
これまで介護報酬は、この劣悪な介護労働者の賃金体制を放置して算定が進められてきたと行って過言ではない。
しかるに今回、初めて介護労働者の守られねばならない人材としてその定着確保が問題とされ、有能なスタッフが介護の世界から離反することを防止することが必要との判断がなされたはずなのです。
ところが、今回の改訂は基本報酬ベースが殆ど見直されずに据え置かれ、代わりに40種類以上の加算による複雑化した介護保険制度に変更され、担当するケアマネジャーや介護スタッフですら分かり辛い制度改正となってしまった。
ケアマネジャーは、4月からの新しい利用表を持って利用者に説明し相談する際に、当然制度全体の説明も行う役割を負わされているが、今回の難解な改正の説明責任は本来国(厚労省)と自治体にあると言わねばならない。
想定される様々な質問と苦情に対して、当然厚労省自治体担当者はその準備をしていると思うが、果たしてきめの細かい説明が出来るのか?極めて疑問に思う。殆どは担当ケアマネジャーに丸投げされてしまうことを危惧する。

今回の改訂が始まるに当たり、各事業所は何とか新規の加算がとれないか?苦慮しているが、実際にとれる加算はそんなに多くはない。下手をすれば、従来の報酬を下回る収支となる可能性も否定できないと思う。新規加算をとれないことがサービスの質が低下することと結びつけられがちだが、逆に新規加算を取れればサービスの質が高いか?と問えば決してそうとは言えないケースがままあるだろう。
加算というものは、あくまでも 基本報酬単価のおまけであり、本来の報酬アップは基本単価を引き上げることなくしては実現されないものであることを忘れて欲しくない。
昨今の非正規労働者の大量発生が、企業の身勝手な雇用政策により生み出されていることを考えると、介護労働者の待遇改善はますます容易ではない情勢が訪れている。「待遇が不十分でも、職を失うよりはましではないか?」こういう囁きが企業側からも労働者側からも既に出てきている。
ワークシェアリングを否定するものではないが、だからといって介護労働者の劣悪な待遇を正当化されては本末転倒ではないのか?
今こそ、もう一度本来の介護労働者の待遇はどうあらねばならないのか?について、国民的議論を緻密にして頂きたいと願う。