資格取得と職を確保することの誤差について。

近年、若者の就職難が問題視されている。
最高学府としての大学卒業資格を取得しても、各々が希望する職を得ることは極めて難しい。大学浪人はもはや珍しいものではなく、2・3回生から企業訪問を繰り返している状況と聞いている。
こうした就職難は、若年労働者の勤労意欲をそぐ要因になり、将来に対する理想を持った若者が影を潜め、スケールの小さい現実的な安定を望む処世術が蔓延っているように思える。

 今日私は大阪で開催された「介護就職フェアー」のとある相談ブースに座って、不特定の相談者のアドバイスをする機会を得ることが出来た。
午後からの約4時間、訪れてくる相談者の質問に可能な限りの対応をする役割に徹する時間を持つ事が出来た。
相談件数は少なかったが、一つ特徴的であったのは、全くの新卒者の資格取得に対する相談ではなく、現在何らかの介護の仕事に就れていて、今後ケアマネ資格等を取得することの意義や、資格は取ったがどうやったらケアマネジャーの仕事にありつけるのか?といった面談が相次いだことが印象に残った。

近年、ケアマネジャーの資格を取る人が増え、資格を取得することが一つのキャリアアップの条件であるかのように見える。
ケアマネジャーの仕事に就くのかどうか?は次の問題で、とりあえずいつでもその仕事が出来る社会的な肩書を持っていたい、そうした気持ちから介護福祉士の次はケアマネジャーの資格という順序で、 誰もが公的資格を持つ時代となってきた。
しかし、一方ではケアマネジャーという職に就かない人が果たしてケアマネジャーの資格を持つ意義があるのかどうか?これについては賛否両論多々あるだろう。
現在ケアマネジャーの需要は、頭打ちだ。居宅においては利用者数の微増により、新人のケアマネジャー着任を困難にしている。1号被保険者の伸び率よりも認定利用者の伸び率が低く抑えられている事がその要因となっており、介護認定引き締めにより要支援者の比率が高まってきた。
こうなると、居宅介護支援事業所が担当する要介護利用者を、一人35件まで伸ばすことが簡単ではなくなってきている。
新人の資格取得ケアマネジャーが、例えケアマネジャーに着任しても、一定期間の研修期間を経なければ、とても採算の取れる担当数をこなす事が出来ない事は明らかです。
居宅の経営から見ると、こうした状況で新人のケアマネジャーを育てることは、相当の労力を必要とされる。新人研修担当係が、一定期間つきっきりで指導し、個人差はあろうがそののち一人前のケアマネジャーが自立していく事になるが、おそらく3カ月から1年を要するだろう。
こうなると、即戦力を求める募集側とすれば、出来れば経験者ですぐに仕事を任せられる人材を先に就活において確保しようとする事になる。

「資格は取れたのですが、ケアマネの仕事がどこに行けばできるのですか?」という質問の裏には、「資格は取れたけど、自分を必要とするケアマネ募集の職場は見つからない。」
「資格を取れたらすぐにでもケアマネジャーの仕事が出来るように考えていたが、甘かったのか?」等々、不安とストレスをくすぶらせている何人もの若者たちを目にして、専門職の進路指導が欠落している日本の就職戦線の現状を危うく思った。
専門職の資格を取らせて、一定のレベルの知識や研修を受けることを奨励することは悪い事ではないが、肝心の就職の扉が個人的対応として光が当てられてはいないのではないか?と感ずる。
 私見では、専門職の資格というものは誰もが取得する必要性はないと考えている。ケアマネジャーに着任するには、それなりの適任性がある。粘り強く、利用者と家族に面接し、引き出すべき利用者の能力を指摘し、目指すべき自立支援を利用者に説明し、必要な支援を提供する計画を立てる事が出来なければならない。
沢山の居宅サービスプラン帳票を漏れがないよう作成し、利用者家族の同意はもちろん、各サービス事業所との連絡調整もまた求められる。