原発の運転期間40年規定は、進歩的かどうか?

26年前、チェルノブイリで大規模な爆発が起き、広島原爆規模の約600倍と言われる放射能が放出され、ベラルーシウクライナ、ロシアの三国を始めとしてヨーロッパ諸国が深刻な汚染被害を受けた。
その経験から、改めて原子力発電の安全性が問い直されたが、それから4分の1世紀後に今度は日本の福島第1原発の事故が発生し、その放射能汚染対策は何十年もの長期的な対応を必要とすることが分かっている。
果たして、原子力発電は人間社会に必要なエネルギーとして今後も存続させる必要があるのかどうか?安全なものかどうか?この問いに対する結論は未だについていない。

 先日細野原発大臣から、「原子炉等規制法」の改正方針が発表され、運転期間制限として40年方針が打ち出されていることが説明された。
 しかし、この法律には例外的延長制度も盛り込まれ、事実上40年の規定がある一定の条件のもとでは延長することが出来る制度になるそうだ。
こうなると、事実上延長を見込んだ対応策が原子力事業所側から準備されるようになってしまうことが懸念される。

 諸外国では、こうした原子力発電の期間設定はどうなっているのか?
米国では法的枠組みは40年であるが、60年まで延長できる仕組みが取られているらしい。英国フランスでは法的規制は設けていない。あくまでも運転継続計画に対して国が認可する形がとられているだけらしい。
一方ドイツでは、2022年までに17基あるすべての原子力発電所を閉鎖する方針となっとり、原発に代わるエネルギー確保に政策変更されている。

 果たして、老朽化が事故のリスクをどれだけ高めることになるのか?論議が分かれるところであるが、費用コストから考えると「原発が引き合わないエネルギー源」となりつつあることについては、多くの国で検討がされている。
ところが、それにもかかわらず原発の建設計画は諸外国でどんどん進められている。
 今後気になるのは、インドやベトナム等今まで原子力発電を建設していなかった諸国において新しい原発施設が建設される予定があることです。
深刻な事故が起こっても、まだまだ原発を採用する必要性を崩していない諸国が沢山あり、そうした世界の原発状況を考えると不安材料が今後ますます増大する状況にあることが心配される。

 在ってはならないが、第2第3の福島原発事故が日本も含めて諸外国で発生するリスクが少しも減っていない。
日本はベトナム等への原子力施設建設に協力し技術提供することに舵を切っているが、果たしてその方針は正しいのかどうか評価は分かれる。
・・・今度の福島第1原発事故は、思いもよらぬ津波災害が起こったから発生した。こんなことは今後起こる可能性は少ない?と。
 しかし、だからこういうことが再び起こることはないと誰が断言できようか?
放射能汚染というものは、すぐにはその影響が判明しないかもしれないが今後何十年かの時間的経過を経て、特に子供たちに大きな影響を及ぼす危険性がある。総合的に考えて人間の体内に影響を与える放射能汚染の実態は、未だに明らかに解明されてはいないが、健康被害を考えると不安材料の方が大きい。

40年規制は、今後のエネルギー政策を考えると一つの前進と言えるのかどうか?微妙な対策だと云えよう。
原発に代わる次のエネルギー開発を進めて、安全な資源を世界の国々と共有することが求められている。
 原発をすべて廃棄することは、それに代わるエネルギー源が確保されていない以上、すぐには実施が難しいことは分かる。しかし、今まで次のエネルギー源開発に対して消極的であった側面は反省されねばならないだろう。あたかも原発がクリーンな2酸化炭素の発生を抑えられる夢の資源であるかのような幻想を振りまいてきた責任が政府にもその一端があることを素直に認めてこそ次の方策へ進んでいける。
人間と原子力放射能は共存することが出来ないという事実が、地球上のすべての生命存続という観点からも突きつけられているのではなかろうか?
 取り返しのつかない事態を引き起こす前に、事故から新しい歴史を開いていくことが、私たちに今求められているように思う。