病院の全面禁煙を打ち出す方針に賛成する。

厚労省が、今度の4月報酬改正に合わせて、病院内の全面禁煙を徹底するための法案を盛り込むことを準備していることが分かった。
これは一歩前進である。
 今まで、分煙を導入する病院が3割以上を占め、患者からの苦情で「くさい煙の害」が問題になっていた。
「人の出入りの際に、喫煙室から煙が漏れている」
「喫煙者の肺に残ったニコチンが、徐々に吐き出されている」
という理由から、「分煙では受動喫煙を防げない」との指摘が強まっていた。病院は、特に患者が治療を受けるために集まる医療機関であり、そこで害毒が含まれる環境に侵されることがあってはならないという結論が出されたこととなる。

 診療報酬の中に、全面禁煙の規定を盛り込み、それが達成できていない病院には、報酬の減額を規定することとなる。
この規定が盛り込まれる診療科は、内科、小児科、呼吸器内科、等が範囲とされ、ほとんどの医療機関がそれに当てはまることとなる。

 08年時点で、約6割強の病院が全面禁煙を実施しているが、この厚労省方針を受けて、多くの病院が全面禁煙へ環境整備をする必要性が出てくる。
喫煙は、単に外来者等に喫煙の規制を強いるだけでなく、職員の喫煙を大きく制限することとなる。こうした方針を打ち出すためには、単なる報酬改正の為だけの施策としては、それを実施するには難しい問題となろう。病院のトップや理事会がしっかりとした禁煙対策を打ち出し、職員や医師看護師への禁煙指示を打ち出すことが不可欠となる。

 今まで日本の病院は、禁煙に対して甘い体質があり、健康を守る先陣を切るはずの医療機関の職員が、実は喫煙常習者であるという(自己矛盾)体質を内在していた。
・・・確かに、医療の仕事はストレスが高く、つかの間の喫煙にのめり込む条件が整っていると云えよう。しかし、あまりにも喫煙に対して甘い体質であったことはいがめない。
頭では喫煙が健康に害毒があることは分かっていても、少しぐらいなら大丈夫。・・・そういう安易さが、ずるずると喫煙習慣を助長している。
 また、医療保険でも非喫煙者の保険料と喫煙者の保険料は同等に扱われており、疾病率の高い喫煙者の医療費を喫煙者が過剰な経済負担を強いられ、制度を支えているという矛盾が放置されている。・・・これについては、不平等な保険料算定を改定して、喫煙者に対する医療保険料割増を断行して頂きたい。疾病リスクが高い保険者に対しては、当然高い保険料が求められていいのではないか?

 こうした背景の中で、今回厚労省が病院内での全面禁煙を打ち出したことは極めて遅きに失してはいるが、一歩前進として評価できる。

 喫煙が健康破壊であることを、社会がしっかり打ち出し教育すべきであり、それでも喫煙を希望する人たちに対しては、それなりの財政負担を含めてリスクを背負ってもらう仕組みを作るべきである。
こうした正しい政策を、公共組織としての政府や医療機関が確実に実行することにより、若者達への喫煙教育が徹底できる。

 喫煙の害により年間13万人余りがなくなっている。
この数字は自殺者の4倍に当たり、志望者の中でも圧倒的に大きな比重を占めている。
 こうした事実にしっかり着目して、今後もゆるぎない禁煙政策を実施する勇気を、厚労省は見せてほしい。