楽天ゴールデンイーグルスの日本シリーズ優勝に思う

昨日仙台の宮城スタジアムは、シリーズ優勝を目の前で観ようと、2万2千人の超満員の楽天応援団が陣取った。・・・恐らく、巨人ファンも何割かは居てたと思うが、楽天応援団の盛り上がりに対して、劣性免れない立場に置かれていることを実感していたことと推測できる。
 テレビを通じて、聞こえてくる楽天応援のどよめきは、楽天が3対ゼロでリードのまま美馬→則本、田中と続く投手陣の踏ん張りを映し出して、異様な歓声が球場を包み込んでいた。(試合は民放でも放映しているが、コマーシャルが多すぎて不愉快なので勿論BS放送で観ていた)

 巨人の選手たちは、精いっぱい実力があるチームとして抵抗を試みたが、ファンの期待と楽天投手陣の意気込みに押されてしまって、シーズン通りの打撃破壊力を最後の試合に発揮することが出来なかった。

 予想では、殆どの人が、巨人有利の予想をしていた。
勢いのある楽天打線も、巨人の投手陣を前にして、攻略は容易ではないと判断されていた。しかし、実際の試合展開は違った。
 7試合のうち6試合で、何と楽天が先取点を挙げ、それを巨人が追う展開となったのだ。…この流れは、当初の予想とは異なった。何故、こうした展開になったのか?
 一つには楽天先発投手陣が、予想以上に好投したこと。巨人打線の特徴を分析し、それに対する対策をきちんと立てていた。的を絞らせない投球をしていたことがあげられる。この点、楽天の戦略が巨人の実力を上回ったと評価できる。

 巨人は、セリーグの頂点に立つまで、ずっと先頭を走ってきて、それほど対戦相手に追い詰められたり、打てなくて苦しめられた経験がない。対戦チームの全てに勝ち越し、苦手を作らなかった。
 恐らく、楽天相手でも、今まで通りの野球をすれば、試合の勝機はつかめるはずだとの思い上がりがなかったかどうか?
 一方楽天は、「東北の夢を実現する」という野球を超えた人々の思いをしっかり受け止めた形でシリーズに臨んでいる。加えて、今年はマー君人気が後押しをした。「田中が投げれば、負けるはずがない」という「神話」が現実となり、連勝記録を更新して、たとえ巨人相手でも勝つ野球をするという意気込みが、巨人の連覇に対する勢いを削いでしまった。
 誰しもが驚いたのは、田中だけではなく、則本や美馬といった若手のピッチャーが好投して巨人打線につけ込みを許さない投球を展開したことだ。
 日本シリーズと言う短期決戦では、どちらのチームが先に自分達の最高の良さを引き出して先に4勝を挙げるのか?が問われる。
殆どの試合で先取点を取られていた巨人は、それだけですでにシリーズを勝ち抜く流れを失ってしまっていたと云えるだろう。
 最終戦での杉内の出来が良くなかったことは誰の目にも明らかであるが、そういう状態でもベテランに頼らざるを得なかった巨人の投手力がすでに相手に追い詰められていたともいえる。
 打撃の方で言えば、巨人の主力打者阿部選手のシリーズに入っての不調も大きな敗因の一つと言えよう。
リーグの戦いでは、彼が勝利の流れを呼び込む一打を放つ、幾多の苦戦ゲームを勝利した試合が沢山あったが、今回のシリーズでは彼のバットから快音は聞かれなかった。何が不振を招いたのか?よく分からないが、シリーズのこの期に来て自分の体調をピークに仕上げることが出来なかった点は今後大いに反省改善が必要と思われる。スポーツ選手は、どの試合で100%の力を出し、別の試合では一定の余裕を持ちながらゲームを進めるべきなのか?理解する必要があるのだ。
 「自分が打たなければならない」と言う責任感が、逆に彼の打撃力を見失ってしまう結果となった。楽天の投手陣の攻め方が功を奏したともいえるが、シーズン中セリーグ各チームでは出来なかったことを、楽天の投手陣は攻めきることが出来たという点で、勝者にふさわしい試合を展開したと云えよう。

 楽天が優勝して、日本1のチームとなり、昨日多くの人達が喜び楽しみ、勝利に酔うことが出来たという点では、今年の日本シリーズは今までにない社会的な貢献をしたのかもしれない。楽天のシリーズ制覇は、野球を超えた社会的な栄誉として歴史に残される。一説によると、楽天優勝に伴う経済効果は、270億を上回るらしい。
 この球団の働きで、多くの東北の人達が元気を取り戻したことは、素直に私たちも賛辞を送りたい。
 …勝負を決めるスポーツは、勝者には多くの称賛の声が集まる。しかし、敗れはしたがセリーグの覇者巨人は貴重な体験を学んだことだろう。短期決戦においては、実力だけが勝負を決めるものではないこと。勝負に対する強い意志と執着心もまた、勝ち負けを決するときに大きな決め手となることを思い知らされたに違いない。
 相手より、さらに上回る「勝つんだという意思」がチームに共有されることにより、勝敗の流れは微妙に傾いてしまうものだということが言えるだろう。運もあるだろう。でも、最後に勝つチームは、やはり勝利の方程式を相手より早くもぎ取ったチームに齎されることは間違いない。
来年の日本シリーズには、果たして楽天は再び現れてくるのだろうか?
実力チームの巨人は、来年再びセリーグの覇者としてシリーズに出てくるのかどうか?
今から、いろんな推理をしていく楽しみが残されている。
 寒い中、必死に戦った両選手の皆さん、ご苦労様でした!
ゆっくり、休養をとって、来年また私たちをワクワクさせて欲しいな。