no38医療と介護の連携を目指した試み。

大阪のある区内で行われた、医師会主催のシンポジウムを紹介します。
2回目の試みということですが、私は今年初めて声掛けをして頂きました。企画としては、「医療と介護の連携」というテーマで、4人のパネラーが順番に話をし、司会者が問題点を引き出しながら討議を進めていくといものでした。
1・最初に取り上げられた話は、4人(ケアマネ、訪問介護事業所、訪問看護、医師)のそれぞれの自己紹介をしつつ立場が異なる現場での取り組みや問題点が出されました。この中で出てきた話題として、医療型の病院から在宅へ戻ってくる重症患者の受け入れ態勢やそのための連携がどれぐらい進んでいるのか?または進んでいないのか?という話です。
急性期の治療や、突発的な疾患に対応する為にはやはり総合病院での治療受け入れ態勢が求められるところですが、それ以外の対応としては、十分民間診療所でも受け入れが可能ではないか?という意見が出る一方、小さな医院、単一の診療所では24時間の患者のニーズに応えきることが難しいという意見も出されました。
また、診療医レベルでの連携という点では、まだまだ横のつながりが出来ていないことが指摘されていました。・・・例えば、在宅に戻った重症の在宅酸素患者について、主治医の診療所からの対応だけではなく、もしもの場合にセカンドドクターを作っておき、何時でもどちらかの医師が訪問看護等からの問い合わせや、患者からの連絡に対応できる体制をとることが求められているのです。
もともと、訪問看護における「緊急時加算」算定の場合は、こうした時の問い合わせに対してしっかりサポートする為の加算ですが、訪問看護側が医師に問い合わせても、すぐに連絡が取れない、という事態がままあるようです。・・・もちろん24時間真面目に様々な問い合わせに対して電話等の対応をされているドクターも居られるのですが、ドクターも人間です。お酒も飲むし、ゴルフもする。・・・何時でも、どんな時でもすぐに電話に出れるとは限らないわけです。
・・・要するにこうした緊急時の対応を、どうするのか?という体制作りが、まだまだ地域で問題にされ、連携による体制作りまでは進んでいないのが現実ということになります。しかし、こうした問題が浮き彫りにされ、今後どういう取り組みをすれば可能なのかを討議することから今後の方向性は見つけられる。・・・まだ、その答えが出てこなくても、どうすれば良いのか?常に考え、可能な対応と連携を進めていく中で、ある時は失敗しても次には新しい対応方法が見つけ出されることもある筈です。

2・次に話されたことは、医療と介護保険の関連において、一体どういう繋がりを作れば良いのか?という問題です。大多数のドクターは、自らの診療所などの医療業務に手をとられ、なかなか患者の介護に関する話し合いなどに顔を出す機会が作れないのではないでしょうか?
もちろん、忙しい診療の合間を縫って、きちんとケアマネジャーなどとの相談業務をされている先生も居られます。

きっと、そんな先生は、地域でも介護との連携における重要な役割を果たされている方だと思います。逆に言えば、まだまだ介護に対して理解のある先生が少ないということです。
介護保険が始まって、もう7年が経ちますが、法律もどんどん変わり、新しい改正介護保険で何が問題にされているのか?よく分からない、という先生も実際には多いはずです。恐らく、医療部門だけでなく、介護事業もやられている医療機関やそれに連なる先生方は、介護の分野での連携確保について、日夜努力をされていることでしょう。たとえば、「サービス担当者会議」について、ケアマネジャーが開催を連絡し、ドクターに参加を求めたとします。求めに応じてミーティングに出席するドクターはおそらく半分以下でしょう。・・・こう断定すると、叱られるかもしれませんが、実際問題利用者にかかわる担当者会議に参加するドクターの出席率は低いのです。何故低いのか?という疑問については、先ほどから上げているように、ドクターの日常業務をたくさん抱えておられ、とても一人の患者さんの為のケース検討に時間を割くことが出来ないと言うのがその主たる理由です。でも、責任はケアマネジャーの方にも半分はある。忙しい先生方の出席できる時間帯に会議の時間と場所を調整する努力が足りないからです。もし、例えばAさんのサービス担当者会議をする必要があり、それを開催する為にドクターや家族・利用者・サービス事業所等に連絡を入れます。その時の調整の仕方を工夫することが求められるのです。

たいがいは、最初はドクターも参加を渋るでしょう。・・・でも、絶対出ないと断る医者もいない筈です。もし、そういうドクターならば利用者と相談して主治医を代えることも出来ます。大事なことは、何度か断られ、電話等でも味気ない返事でコミュニケーションを拒否されても、何とかドクターに「あなたの参加が必要です。患者の為に相談に乗って下さい」と食い下がることです。ケアマネも人間ですから、一度や二度、ドクターから苦い返答を貰ってしまうと、「誰がもうあんたなんかに相談するものか!」と穴を向けたくなるものですが、そこをぐっとこらえて“しぶとく”食らいつくことが大切です。「利用者の力になって下さい!」とお願いすれば、医者の方も弱いものです。そんなに云うのなら、一度会議に出ようか?ということになります。・・・そして、一度会議に来てもらえば、そこは様々な問題を提起して医療の立場からの協力や意見を頂くとともに、利用者のためにどんなことが出来るのかをともに考えることになるのです。

今日のシンポジウムでは、「通院介助における訪問介護の算定の仕方」に関して、“中抜き”をしなければならないことなども問題として出され、病院側もその利用者が院内にて介助が必要であることの判定をする必要があることも出されました。その際、ケアマネジャーなどが病院・ドクターに対して院内介助の必要性に関して意見を求めることがあり、その際は答えを返してほしい事が出されていました。
コムスン問題が表面化して、現在介護事業所に対しては法令順守が厳しく言われており、自治体の指導も甘くない。こういう現実では、今までのように簡単に身体介護で処理していたサービスを、厳密に見直して請求することが求められている。・・・実地調査では、もし不正な請求とみなされる事実が発覚したら何年もさかのぼってサービス費の返還が指示されることもある。特に、故意に行われている不正が明らかになれば、それこそコムスン同様に事業所そのものの看板も取り外さなければならない羽目になる。・・・だから、介護の事業所もだんだんサービスに対してへっぴり腰となり、「そういうサービスは出来ない。そういう項目は介護保険では出来ない・・・」等々と要望される支援を断るのに汲々とすることになる。あれもダメ、これもダメ…という説明ばかりしていると、だんだんケアマネの方も元気がなくなり、自分は一体何のためにこの仕事をしているのか?分からなくなる・・・こうした現実は、実際のところ多くの居宅介護事業所で起こっている悩みでもあるのです。こうした「元気なし症候群」の状態を蔓延させているのは、はっきりいって現在の介護保険制度を作っているおえら方の責任です。保険財政の健全化という大義名分を掲げて、その実利用者の切実な要望、大切なニーズを「それは保険でやることではない」と切り捨てているのです。最近では、「外出介助」においても、散歩などという項目では介護ヘルパーを使うことが出来なくなりました。以前は、・・・というより介護保険開始時は、利用者さんの意欲を増進し、気分転換を図ることにより生活における精神面でのケアーを図る…等々の理由付により散歩介助を位置付けていたケアマネジャーも多数あったのです。(何を隠そう、私もそうした位置づけで何人もの身体介助を算定したプランを作っていました。)
ところが、コムスン問題などで典型的に示されているように、そうしたプランを「安易な身体介護の適用」として不正請求の烙印が押されることになったのです。・・・ちょっと待って下さい、と言いたいところです。「利用者の意欲を回復し、心身のバランスを確保する手立てとして、室内ではなく居宅外での散歩を促すこと」が何で不正請求なの?

健全な高齢者として、外出をして散歩をすることが大切な生活行為の一つであることを否定されるのでしょうか?厚生省や自治体関係者は仰るのです。「散歩が意味がないと言っているのではない。外出をする必要がないというのでもない。…ただ、それを保険適用項目として算定することを不正としているだけです」と。

こうした説明を聞いてどう思いますか?・・・私がもし、第1号保険者となり、認定を受けてこうした説明を聞いたとしたら、きっと言い返してやると思う。
「何だかんだと言って、結局財政の問題を第1義に考えて、高齢者のニーズ、サービスの必要性を切り刻んでいるだけじゃないか!」と。「そんな、役に立たない保険制度では安心できない。夢もない。・・・そんな保険制度は温かみのある介護とは言えない」と。
皆さんは、どう思われますか?ここからの議論と、今後の日本の介護に対する提言は、それぞれ私たちが担っていかねばならない。決して諦めず、地域に根ざして仲間を作り広げていきたいものです。あるべき本当の介護・医療の在り方は、自分たちで示していかねばならないのではないでしょうか?