介護入門

 

書籍名:   介護入門  

カテゴリー :評論・エッセイ    

著者名 :  モブ・ノリオ  

発行年:  (西暦) 2004  

出版者 :  文芸春秋社  





この本は、題名を見て買いました。

第131回の芥川賞を受賞しているけれど、今までその事を知りませんでした。

正直、読み始めてなかなか進んでゆきません。

作者の感性にに付いてゆけないからです。何度も休止してまた読み続けてやっと最後まで読み終わることが出来たのですが、少し後悔する気持ちも在ります。

ある意味、作者の感性を理解することは出来ないだろうということと、最後まで難解な表現が飛び出すので、理解しがたいことです。

でも、確かなことは、主人公は、祖母を母親と共に介護することにより、他では味わえない感性の領域にたどり着いているということです。

物語の冒頭に、一枚のカラー写真が掲げてあり、作者と祖母が寄り添って写っています。二人の姿を繰り返し見ていると、初めは少し違和感が在りましたが、だんだんほのぼのとした暖かさのようなものが伺えるようになります。・・・この写真、2000年の5月14日朝0:27分と時刻表示が在ります。おそらく夜中のおむつ交換の後にでも、二人で内緒にショットに収めたものでしょう。・・・そう、主人公は、仕事をする母親に代わって夜の介護者として祖母の横でずっと介護を続けてきているのです。・・・日中は、介護ヘルパーが来るので公的な介護者に任せてはいるが、夜間介護ヘルパーではやってもらえない介護において、重要な役を毎日果たしているわけです。

しかし、彼が軽蔑の眼差しで見下している人物についても触れる必要が在るでしょう。実の娘主人公から見れば叔母さんに当たる人物が、祖母に近寄り話をする時、彼はその偽善的な態度と自ら手を染めず”おしめ”の一つも換えようとしない相手に対して攻撃的な言葉の刃を向けているのが分かる。彼は書いている。

介護入門 一、《誠意ある介護の妨げとなる肉親には、いかなる厚意も期待するべからず。仮にそのような肉親が自ら名乗り出て介護に当たる場合は、赤の他人による杜撰さを想定し、予め警戒の目を光らせよ。続柄意識だけが義務感となって彼らを緩慢に動かすに過ぎない。被介護者とともに生き、ともに死ぬ覚悟なき義務感など、被介護者を必ずや不快にさせると思え。責任感は気高く、義務感は卑しい。彼らの汗を目にしたときに限り、警戒を緩めるべし。》

果たして、本の紹介になったかどうか疑わしいのですが、この風変わりな介護本を一度手にしてみては如何でしょうか?