書籍名: 男と女の老いかた講座
カテゴリー: 評論・エッセイ
著者名: 三好春樹
発行年: (西暦) 2001
出版者: ビジネス社
値段: 1000-1500円
投稿日時: 2006/11/11 11:06
本のサイズ: B6版
この本は、「介護の社会化」に物申す主張がちりばめられている。しかし、介護保険をはじめとする制度の進歩性を認めないと言う訳ではない。そうではなくて、制度では抜け落ちているものを指摘している。老いという、人間には避けることのできない問題に焦点を当て、特に男の側が持っている適応力の欠落を指摘し、解決の方向性を提言している。彼はこう述べています。「この本では、女性が老いにちゃんと適応する強さを持っているのに対し、男性が老いに弱く、老いる前からすでに危機を迎えていることを明らかにし、出来る事なら、女たちを見習って、何とか男が老いをたくましく生き抜く方法を探っていきたいものと思っている」と述べている。
これは、云わば男性に対する応援歌であるとともに、無自覚な亭主族に対する警告でもある。男社会のように見える現実、そのの地位や権力も、老いてしまえば何のこともない崩れ去る幻想のピラミッドではないのか?と作者は問いかけているようです。
金や地位・権力をほしいままにしていた人ほど、老いてから、障害を負ってからの落胆度が大きいことが予想される。
どんなに男が優秀な要素を女に比べて持っていると信じ込んでいても、裏を返せば、年老いて認知症になってしまえばすべては何の保証もない、権威も、自身も消えうせるただの人となってしまう。・・・こんな場合、むしろその人が積み上げた自信やプライドが、返って老後の生き様を妨害する要素に転化する事がたびたびみられる。
著者は、概して男は老後の生き方が”へたくそである”と指摘し、もっと、少年になれと呼びかける。
邪魔な権威やプライドを脱ぎ捨てて、少年の気持ちに帰って老後の暮らしを楽しめる人になれれば、うまく過ごしてゆける。そのためには女を敵にするな、とも語っています。所詮、女のたくましさには男はかなわない、という白旗をまず掲げて?それからどう彼女たちと共存してゆくのかを考えてゆけば良いと。
多くの男たちのように、老後になって「粗大ごみ」化され、「濡れ枯葉」扱いされる男の現状を直視して、あまり無駄な強がりを通すべきじゃないことを諭している。この言葉は、がんちくのある言葉ですよ・・・
近年、熟年離婚が珍しいことではなくなり、年金の分配を離婚時にどうすべきか?などが盛んに論議されている。
意気盛んな女たちに、正面から戦いを挑んで孤立する一部の男性たち・・・彼らが女たちの力を借りずに老後を自活するなら?別に止める必要もなく生き方は自由であるが、意気盛んなころの権威をそのまま振りかざして、力ずくで女たちを従わそうとすることには無理があることを認めるべきであろう。
すでに、日本の女性たちは、男性抜きで自由に生き始めているし、その現実を直視すべきであろう。
今後男性として、如何に老いをとらえてゆけば良いのか?この問題に三好さんは一石を投じているといえよう。
彼は、勢いずくフェミニストの女性軍団に対して、男の立場から母性の特性を解き明かしている。女たちに対抗するのではなく、彼女らに指導者としての地位を明け渡して共存すべきであると。
「女房に、尻をしかれて男の役割を果たす」ことが幸せにつながる・・・
昔の言葉で言えば、そういうことだ。
老いに上手に付き合いたい・・・そう思う人がいれば、一度この本を読んでおかれたし!