1944年8月22日鹿児島県沖で何が起きたのか?

映画「銀の鈴」について

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監督・脚本:斎藤 勝
8月22日が65周年に当たるという。
65年前と云えば、まだあの戦争がますます深刻な犠牲者を増やしていた時期だ。やれ特攻隊、やれ竹やり訓練、やれ天皇陛下の為には命をも惜しみなく差し出すことが当然とされた時代…
終戦1年前に戦争の為に動員されたのは、兵務に服する男達だけではなく、老若男女全ての人達が何らかの戦争体制への動員・協力を余儀なくされていたことが分かり、当時のすさまじい国家動員体制は、私達の想像を超えた有無を言わせない強制社会として機能しており、個人が反対する余地は全く残されてはいない状況であった。

しかし、そんな中でも、早く戦争が終わることを祈っていた国民は多かったと思う。ただその声を上げる方法も手段もはすべて奪われていた。・・・もし、反対の意思をあからさまに示せば、確実に憲兵や警察により抹殺される運命にあった。そして本人だけではなく、反抗したものの家族親族一同が、「非国民」のレッテルを貼られる。一旦こうした社会的パージ=差別をこうむると、当時は生きるための仕事も地域でのつながりも遮断されてしまう。文字通り、市民としての権利は全て剥奪されかねない状況があった。

人々は、心では泣きながら、夫を、子供息子達を戦場に送り出し、男たちの無事の生還を祈っていた。

映画「銀の鈴」は、昭和19年8月22日、沖縄からの多くの疎開を目的にした子供達(合計1418人)を乗せたまま沈没した“対馬丸”の悲劇をテーマとした映画です。
米軍の潜水艦から発射された魚雷が“対馬丸”に命中し、船は無残にも沈没した。非戦闘員の子供たちや老人・女性達を満載にした疎開船3集が、何故米軍から攻撃されねばならなかったのか?それは当時の米軍海兵隊の指揮官に聞かなければ詳細は分からないだろう。米潜水艦は非戦闘員の船と分かりながらも攻撃したのか?それとも誤って攻撃の的となったのか?それについては今ここで断定は出来ない。
しかし、当時の日本近海の海上では、もはや軍艦であろうが商船であろうがはたまた客船であるなしに関わらず、全ての日本船は攻撃の対象になっていた可能性がある。
この対馬丸以外にも、客船や一般運送船が狙われ撃沈されてしまった例には枚挙を厭わない。・・・だとすれば、危険な運航を何故疎開船として出向させたのか?それについても大きな疑問が起こる。
まもなく始まるであろう沖縄での悲惨な戦闘から一般人を救うためには、九州への脱出を1日も早く急ぐ必要があると考えられ、その計画が米軍に狙われてしまった。

記録によると、対馬丸の他2集にもたくさんの老若男女が船に満載のっていたが、辛くも九州の港にたどり着くことが出来たようです。・・・沈んだ対馬丸から投げ出され、辛くも生還した人達もいた。おそらく一緒に疎開していた他の2集の船により救出をされたのであろうが、よくも助かったものだと思う。もし、米軍がその気になれば他の2集についても容易に撃沈させることが出来ただろうと推測される。しかし、なぜそうならずに攻撃が対馬丸だけに限定されたのか?それについても謎のままだ。人道主義的な措置として攻撃が控えられたとも考えられるが、そもそも対馬丸への攻撃自体が非戦闘員を満載した疎開船に対する攻撃であることはおそらく米軍は察知していたのではないか?だとすれば、対馬丸への攻撃は、日本の非戦闘員に対する米軍の残忍な攻撃計画の序章であったということになる。
本土等への空襲も日に日に激化し、あらゆる都市に対する無差別爆撃が開始されていくことになる。この戦争は、単なる軍隊と軍隊の戦闘に留まらず、広範な国民を巻き込んだ総力戦となっていき、それにつ入れて犠牲になる市民の数はうなぎ上りに増える。もはや戦場は日本全土に広がっており、どこにいようと安全なところはなくなってしまう。
普通なら、ここで国民の不安は最高潮に増大する筈であるが、残念ながらマスコミ等の報道機関は全て軍により統制されていた。正しい報道はなされず、軍に都合の良いことばかりが強調され、真実は隠された。・・・こうした社会で、本来あるべき批判的な意見、客観的な評価は隠され、軍に都合の良い報道だけが取り上げられ誇張されて報道されてしまう。いつの時点から、軍部による報道管制が確立したのか?それに関しては専門家の論議にお任せするが、昭和19年夏の時点では、日本の戦時動員体制は確立していたと思う。従って対馬丸事件は正しく報道されず、生き残った人々に対して事実を語る事が禁止され「緘口令」が敷かれた。長い間、対馬丸の悲劇は伏せられたままになっていたがようやくこの映画を問うして真実が明らかになる大きなきっかけが出来ている。

詳しい対馬丸の事件とその後の報道については、ぜひこの記念映画を見て参考にしてほしい。私も見損ねているので、この映画が上映されることを楽しみにしている。

対馬丸に関する本がありました。

朝顔にかぶりつきのバッタ君、ただ今食事中。