ケアプラン有料化(自己負担導入)に反対します。

先日、新聞等でも報道されているように、2012年の介護医療の同時改定で、居宅介護支援費の自己負担導入が厚生労働省より提案されようとしていることが明らかになりました。

 この導入案は「社会保障審議会介護保険部会」ですでに討議提案されていた内容を、政府として導入へ向けて代案化した内容となっており、ケアプラン有料化以外にも高所得者の自己負担率引き上げや軽度者(要支援1・2の利用者に対する自己負担を)2割程度に引き上げる案等もセットで提案されています。

こうした負担増しの提案が、介護保険を利用している人たちに向けられており、全体の保険料軽減にはつながらないことをまず懸念したい。
そもそも、日本の超高齢化傾向は予想想定された現象であり、それに対する社会保障費をどうねん出するのか?が理念として示される必要があると思う。
介護においては、要介護認定を受ける人が増え、おのずと介護サービスの社会的負担は上昇することは避けられない。これをどこから仕組みとして調達するのかを国会において決めて頂くこととなる。
今回膨れてくる費用負担を、サービス利用者自身に向けられている点に注目し、こうした費用配分はふさわしい回負担とは言い難い。
居宅介護支援費の1割負担により、サービス利用者は保険料負担増しに加えてケアプラン作成費用を毎月一定額負担をしなければならなくなる。
 こうなると、より良いケアプランが選ばれるというよりも、より良いケアプランが選ばれなくなることが懸念される。行き着くところは「セルフプラン希望者」の増加であり、適正なケアマネジメント実施の歯止めがなくなってしまうことが心配される。

厚労省は、こうした利用率引き上げで、全体の保険料負担を高々70円程度引き下げる効果があると試算しているが、果たして本当の意味で引き下げにつながるだろうか大いに疑問がある。

一つ一つ細かく反論する必要もあるが、ここではケアプラン有料化によるどういうリスクがあるのか?について述べ、そこで失われる減点効果が計り知れないものがあることを取り上げてみたい。

もとより、10年前の介護保険開始時には、ケアプランの作成を行う介護支援専門員は、すべての介護保険利用者に平等公平に担当することにより、適切かつ公平なケアマネジメントを実施することを旨としてこの制度が生まれている。
ケアプランが有料になれば、おそらくケアプランを利用しない意向の利用者が増え、彼らは「セルフプラン希望」を自治体等に要望する。その際「セルフプラン作成」をだれが指導し事務苦情相談を担当するのか?
 おそらく、現在の自治体スタッフでは到底対応できないだろう。相談陳情の列ができることは目に見えている。(月額1000円から1500円が節約出来るため、かなりの利用者がセルフプラン作成)を希望することになり、そうした要望に応えられる窓口の設置が自治体等に必至となる。
この人件費をどこから出すのか?
ケアマネの費用を1割抑えられたとしても、それ以上の人件費および苦情対応費用が発生することは、誰が考えても分かる。

こうしたことひとつ考えてみても、今回の改正がいかに深刻な「制度疲労」を露呈するか?明らかだと思う。
加えて、質の高い特定事業所が淘汰されてしまう懸念がある。
(加算分が利用負担につながるので、敬遠されてしまう可能性あり)
こうしたことを、許すわけにはいきません。

今回の改正について、果たして国民的理解が得られるのでしょうか?
制度を論議する(審議会の介護保険部会では)居宅介護支援費の自己負担導入に反対する意見もあるが、逆にこれに賛成する人たちもいる。
 
 賛成派の人達が一律にいうことは、「ケアマネの質が低下しているので、今回の自己負担導入によりケアマネの淘汰が必要」という理由らしい。なるほど、自己負担導入となると頼りないケアマネジャーや、実力のないケアマネジャーは生き残っていけない可能性が高い。
しかし、果たしてそれが質の高いケアマネジャーを育てるのか?という疑問が残る。
自己負担を強いられた利用者の主張が強まり、適正なケアマネジメントがますます難しくなり、利用者の意向がより反映されるサービス導入となり敷いては不必要なサービス量が増えるのではないか?という疑問がある。
 ケアマネジメントが曲がりなりにも防波堤となっていたから、今まで抑えられていた不適正なサービスが、今後は歯止めが利かなくなるのではないか?
ケアマネジャーがいたからこそ、毎月行っていたサービス計画実施のモニタリングが、今度はケアマネ排除により目が行き届かなくなることは疑い得ない。

もう一度、この10年ケアマネジャーが行ってきたケアプラン作成の功績と効果を確認して頂き、今後も等しく利用者が無料でケアプラン作成を依頼できる制度を堅持すべきだと考えます。