家に帰りたい…その声が耳に残りました。

土曜日、業務の方は休日なので家で過ごす予定でした。
しかし午前に、担当する利用者の家族から相談の電話が入り、「歩けなくなり転倒を繰り返している。病院に連れて行くことも出来ない・・・」という訴えを受けて急きょ出動となりました。
 あわてて身支度をして、大阪の事務所に行き、緊急時用に確保している車いすを押して利用者宅に伺い、娘さんから事情を聴き、本人の状態を確認する。昨夜は救急で病院受診もされたのですが、救急医の診断の結果結局そのまま自宅に帰さる。家に戻れたのは良いのですがトイレまで一人で移動が出来ず、家族が一晩その都度呼び起されてトイレ介助をされたようです。本人の状態は、食事も十分とれておらず脱水状態にあるようで、このまま自宅で静養しても娘さんの負担が重なることが予想され、別の病院に受診を勧めて早速身支度してタクシーで病院へ向かう。
 あらかじめ、行先の病院へは、当直医師の診察を電話依頼していたので診察と検査を受けることが出来た。しかし、点滴を受けながらも利用者本人は「トイレに行かせてくれ!」と何度も訴え、「オムツを当てているから、ここでしてくれていいよ。」と娘さんが宥めても納得せず、「はよう、連れて行ってください。漏れてしまう。看護婦さーん!?」と大声を出します。
「点滴が終わるまで、待ってください。」と声かけても、本人はトイレに行かしてくれ、と言い続ける。・・・やむなく、点滴を抱えて二人がかりでトイレまで車いす介助し、トイレに座らせて念願の排泄・・・しかし、ほとんど出ません。少し便が出たようです。本人も納得して又点滴室まで車いす介助。しばらく安静に寝て戴く。…ところが15分ほどすると、再び「トイレに行かせてくれ」と訴えられる。娘さんが懸命に「今行ったところやから、しばらく我慢して、オムツやからそこでして」と説得するも、本人納得できず大騒ぎ。・・・こうしたことが繰り返され、疲れたらしばらく大人しくなって寝る。しかし、すぐにまた覚醒してトイレに行こうとして駄々をこねだす。
 
 こうした繰り返しで、約3時間、ようやく病院での入院が決まり、部屋まで車いす介助して無事病室に寝かせることが出来た。本人は家に帰りたいと訴えるも、後は家族さんに任せて病院を退出する。おそらく今晩は、家族と看護婦さんを困らせるのでは?と心残りを抱きつつ、落ち着いて欲しいと願う。
 家族さんの方は、本人が落ち着くまで、傍に付き添うように病院から告げられ、帰ることが出来ません。・・・おそらく今晩も、本人が不穏になる可能性があり、利用者に付き添って安全確保の見守りをしなければならなくなるようです。・・・この病院は、完全看護ではないので、大人しくしていない患者については家族の付き添いが義務付けられる。しかし家族に介護力があれば良いのですが、この利用者の場合一人の娘さんが全てをやらねばならない。母親も実は長期入院している。
 ・・・このままでは、娘さんの介護負担が重なり何とかしなければ?と気持ちが重くなるも、他に方法がなく、次にやらねばならないことを整理することとなる。
 ケアマネジャーなので、事業所に帰ってからも以下のことを事務作業する。
まずは、今日の支援の経過記録を書き、課題を整理する。
次に利用者の区分変更申請に備えて、申請用紙の整理と用意をする。
退院後は介護用ベットが必ず要るようになるので、レンタル事業所に連絡してあらかじめの相談と段取り調整。
今回は入院なので、退院すればすぐに設置可能な調整をする。
それから、保険者に対しては、「軽度者の福祉用具貸与」の申請準備として用紙に必要事項を記載し、
担当主治医が決まればすぐに「医学的所見」の記載をしてもらえる準備をする。
 以上の事務作業を済ませたら、夕方6時前になっていたので、早々に事務所を出た家路に着く。
 一日を振り返ると、今日は久しぶりに利用者家族からの通院から入院の直接支援に携わることとなった。介護は特に体力が欠かせない仕事です。
・・・通常は、ケアマネではなく訪問介護事業所等の人材を当てにすることが多いが、今日のように緊急の対応時は、他に方法がない場合ケアマネが動くことがある。
ケアマネが出動することは、いざという時の最後の支援方法になるが、少しは娘さんの負担を軽減して利用者支援に寄与することが出来たように思う。その半面、入院して頂いても解決できない様々な問題が残っており、この先利用者が治療を受けてすぐに歩けるようになる保証もない。また、利用者が大人しく入院をしてくれれば安心するが、娘さんや看護婦を困らせ、「退院させてくれ」と手を焼かせることになるかもしれない。最悪の場合は、強制退院となる可能性もある。
 利用者には治療を受けようという気持ちよりも、「家に帰りたい、トイレに行きたい、ビールを飲みたい」等々の要求が渦巻いており、理屈でいくら説得しても納得は難しい。・・・昔のように、本人を力ずくで身体拘束して大人しくさせることは出来ないので、手を焼かせる患者は退院するしかない。しかし、そこで困ってしまうのは家族であり、本人一人では自宅に連れ帰っても自分で身の回りのことが出来ない。家族介護に限界があり、介護サービスについても軽介護度での利用者支援には限度がある。・・・細かいことを書けばきりがないが、こうした入退院の事例は多い。
 つくづく感じるのだが、利用者が「トイレに行かせてくれ」と言う気持ちは尊重したいし、その為の介助は行いたい。
しかし、頻繁なトイレ介助は家族の介護力を疲弊させ、利用者の体力も奪ってしまう。ある一線では、オムツを当てたりする方法を取らねばならず、利用者にオムツで排泄をお願いする場面も出てくる。ポータブルトイレを使う方法も在るが、今回のケースの様に頻繁な便意や尿意がある場合は、介助する人の疲弊=介護負担が課題となる。
 確かに本来は、トイレで排泄をするために介助をすることが本当だ。その為の介助方法を相応しい形で提案しアドバイスするのがケアマネの役割だろうと思う。
ところがその基本と、実際に介護する条件とが噛みあわない場合どうすれば良いのか?きっと普通は、利用者の訴えは抑えられ、仕方なくオムツに排泄を強いられることになるし、バルンをつけられることにもなるだろう。
 私が今願うことは、利用者に対して「大人しく治療を受けて戴きたい」と言う思いですが、果たして入院生活が順調に続くのかどうか?
 自分が行っている居宅介護支援には、沢山の利用者と家族が関わっており、程度の差はあれどのケースでも介護が不安となる可能性があるケースばかりです。
利用者と介護者のバランスがとれていれば安心なのですが、いったんバランスが崩れだすとどう修復すれば良いのか?混乱する事態となる。
介護保険制度が、増え続ける利用者と家族にとってかけがえのないパートナーであり続けられるよう、明日からの活動が展開できるよう、今日は一休み。・・・転送電話をそばに置きながら…

今日は、朝かなり温度が下がっており、さすがの朝顔さんも一つ二つ咲いているだけ。そろそろ朝顔の終了です。
数日前の、朝顔のスナップを見て下さい。