no35進まない特定高齢者の予防訓練事業。

 (1)4月から改正された介護保険の介護予防事業で、特定高齢者(全体の5%程度といわれている)の選定が遅れていることが問題とされている。厚生労働省は65歳以上のお年寄りの約5%を目安として特定高齢者を選別することをすでに示している。しかし、半年が経過して、実際には15の政令指定都市では、平均0.2%の達成だった。事業がスタートして半年余り経つがここまで立ち遅れている原因はどこにあるのだろう?。その原因を探る必要がある。参加者不足で予防教室が開けない現状において、どうすれば特定高齢者を掘り起こすことが可能なのか?

 25項目の健康チェックの項目すべてにおいて、チェックが無ければ特定高齢者としない規定があり、そんな厳しい基準は誰もクリヤ出来ない、もしそれが該当する人ならばとうの昔に介護認定を受けることになるのではないか?という疑問がある。厚生労働省は、こうした疑問について、「現状が少ないということで基準を緩めることは介護保険財政にとってはマイナスだ」と見解を出しているという。しかし、こうした見解は、そもそも特定高齢者に介護予防の訓練を受けさせて要介護状態になることを防止するという意義を否定することに行き着いていることを知るべきだ。

(2)特定高齢者を選別する健康チェックは、各自治体の区役所などの住民窓口にて、必要とする人に実施を促す保険所などの窓口が設置されているそうだが、実際にはどこでそれがなされているのか判りにくい。
もっと住民が自由に気軽に健康検査を請けられるシステムに変えなければ宝の持ち腐れとなる。65歳を過ぎれば、誰でもどこでもすぐにこうした健康検査が受けられ、それぞれの健康状態がチェックできるようになっていなければ予防に繋がらない。

現在、15政令指定都市で、平均が0・2%の達成率であり、特定高齢者の選定が遅れていることを認め、早くこの遅れが是正されることを求めたい。

(3)地域で住民サービスの接点となるべく設置されている包括支援センターでも、特定高齢者の選定に関しては消極的な対応が一般的である。筋力トレーニングなどのトレーニング機器の導入が進められているにもかかわらず、(何百万円のパワーリハビリの機器が投資されているにもかかわらず!)肝心の特定高齢者の発掘が遅れている。この原因の大きな要因として、介護保険の予防プラン作成とその対応に人手の多くがとられ、そのほか虐待相談対応などの業務などが優先されて現状では特定高齢者の選定にまで手が回らないのが正直なところだと言われている。いくら当初の位置づけにおいて、あるべき取り組みがとり沙汰されても、実際にはことが全然進んでいない。これでは、メニュウだけが並べられている「流行らない料理店」のままではないのか?

(4)・では、今後の特定高齢者の施策はどうなるのか?果たして、厚生労働省が言うように介護予防事業が始まってゆくのだろうか?現状を見る限り、この回答は見通しが見えない。厚生労働省の基準では、各自治体の取り組み状況は改善する見通しがつけられないのです。・・・この場合、要介護状態になる人を食い止める役割としての位置づけは「理論倒れ」になることに・・・?<この責任は、厚生労働省の指導にある。国がもっと積極的な対応の指示を出していれば、各自治体での取り組みはもっと変わったものになっていただろう。・・・問題は、資金の出所である。介護保険財政から出せないならば、各自治体が運営資金を支出しなければならなくなる。それをしたくないから、どうしても新しい事業に対して消極的になってゆく。

結論としては、事業の必要性がはっきりしているのなら、本来的な資金は介護給付の財源から出すべきだと思う。・・・そこでは出費増になるが、結局は介護給付の予備軍を予防するわけだから、差し引きがどうなるかの考え方だ。今回の介護予防の制度には、こうした長期的な視点が欠落している。口先だけでその必要性を謳っても、現実にそれがなされないところに欺瞞がある。
特定高齢者をめぐる現状の停滞を放置せず、必要な高齢者選別を早めて、早急な訓練の開始を促してゆきたい。肝心なことは、訓練の結果、要介護高齢者の増加防止に繋がることの実績を早く上げることです。健康チェックのあり方を見直し、必要な高齢者の枠を広げて、予防訓練が裾野を広げることが、本来の介護予防の道に繋がると思います。
<H18年7月記述>