No.10サービスの在り方と、自立の観点について(その3) Cさんの場合。

Cさんの場合。

(病状と生活の経過)は、日中仕事に出ておられる息子さんとの二人暮しです。3年ほど前に、股関節の人口骨に取り替える手術をされ、手術が上手くいって、今では、杖にて、居室内の歩行が可能です。しかし、無理をすると疲れてしまわれます。



日中は、洗濯をしたり、食事の用意をしたりされますが、何せ、2階のダイニングルームに上がると、すぐには1階に降りる事が出来ず、人が来ると、大体はインターホーンで話されて応対され、八百屋さんや、どうしても降りなければならない時だけ、階段にて杖と手摺を掴みながら降りてゆかれます。



何度か、階段から滑り落ちかけて、危ないめをされています。それでも、昼間は一人だし、誰の助けを借りるわけもいかず、1階にある自分の部屋で寝ておられる事は殆どありません。

しかし、調子の悪い時は、やむなく横になって寝て居られることもたまにはあります。



通院は月に1回行かれていて、知り合いの八百屋さんが、善意で送り迎えをされていると、何時も喜んで話されます。それまでは、嫁いだ娘さんが、仕事の都合を付けて送迎をされていたらしいのですが、娘さんの家族ともいろいろトラブルがあって、身内からの援助が今は見込めない状況です。



(サービスの経過と介護度の問題)



Cさんの当初のサービス導入は、股関節の人口骨をされているので、腰と脚部に負担をかけないため、介護用ベットのレンタル、それから、外出時に使われる、車椅子のレンタルでした。

退院当初は、娘さん達もしょっちゅう来られていたので、訪問介護等のサービスを利用されていませんでした。しかし、次第に、娘さんのお孫さん達も、しばしば訪れるなか、ついつい可愛いお孫さんのために無理をして、動きすぎて、疲れが出てしまうことが重なり、加えて、娘さんの旦那さんとの確執が出来、ケアマネが訪問しても、愚痴ばかりが出る事が多くなってきました。

特に、お金の面で、娘さんたちが親に頼りすぎていること、障害を持つ自分に対する思いやりが無い事等に苛立っておられました。・・・そんななか、訪問介護のサービスを紹介し、身内で出来ないことが援助してもらえる事を説明すると、定期的な買い物同行介助(車椅子による)のサービスを遣って欲しいという事になり、早速実施するに至りました。

サービスを利用されてからは、利用者の表情が、がらりと変わりました。

今まで、訪問すると、娘さんたちの家族等に対する不満をいっぱい話されていたのに、次第に、定期的な外出出を如何に楽しんで遣っているかを話されるようになってきたのです。表情も、ストレスが無くなってきたためか、以前ほど不満が溜まらなくなってきたように見受けられました。

同居されている息子さんも、最初は、何故ヘルパーを使うのか理解されなかったらしいけれど、次第に、母親の表情を読み取って、同意されてくるようになりました。日中は、家におられないので、家事全般の事は母親に任せられており、少しでも負担の無いやり方があるのなら、訪問介護の利用をすれば良い、と思われるようになりました。

Cさんが、気兼ねなく訪問介護のサービスと、福祉用具のレンタルを利用継続されてゆく事で、毎日の生活リズムが、上手く機能してゆく様になり、順調に、Cさんの自宅での療養生活が経過して行きましたが、ここで、大きな変動が訪れました。



介護更新認定で、要介護度が、今迄の”要介護1”から”要支援”に落とされたのです。

一般的には、これは、要支援に上がる=健康になるという意味ですが、実際には、より軽度のランク付けをされる事により、限度枠の単位数が大幅に削られることになったのです。16580単位から、6150単位への変更になります。約1万単位ほどのサービス量が減少するため、サービスの調整が必要となってしまうのです。具体的には、Cさんの場合は、今まで、週2回の外出(身体介護)をされていたので、その分、限度枠からはみ出る事になり、自己負担の費用が、どんと増えてしまう事になりました。年金にて息子さんと生活されているので、突然の出費増大は、大変困ると悩まれました。



最初、介護度の変更申請をしましょう、という話になったのですが、変更したからと行って、必ず、元の介護度に上がるとは限らないことを説明しました。又、その間、先行して使ったサービスに就いては、介護度が上がらない場合は、全て、食み出し分の自己負担をしていただく事となる等々をお話しました・・・その結果、変更申請を諦めて、新しい介護度にて、サービスの調整をして見る事になり、週2回の買い物に出かけられていた計画を、週1回に変更し、月全体の訪問回数を減らしてみる事を提案させて頂きました。最低、週に1回は、外出と買い物が出来る事を約束できたので、Cさんは、満足され、後の生活援助のための訪問により、居宅内の掃除や片付けの応援と、買い物代行をする形となりました。



こうして、Cさんの場合、今迄の介護度が下がるという事態をケアマネとの相談の中でサービス変更をする事により対応する事が出来、現在に至っています。サービス事業所のヘルパーさん達も、Cさんの状況を良く理解され、少しでもCさんが、居宅での生活を遣り繰りしてゆけるよう、色々声賭けをして下さっています。利用者本人からも、”ヘルパーさんが定期的に訪問して貰えることが有難い”と、何時も、話して頂いています。



(まとめ)

Cさんのケースでのポイント。

1・一人で外出出来なくなったCさんにとって、買い物同行こそ、大切な生活面での活動である事を理解する。



2・福祉用具のレンタル、(ベットと車椅子)は利用者の障害を考えると、如何しても外せない。



3・要支援という、介護度の限度枠では、必要な頻度のサービスが使えない。



4・やむなく、このケースでは、サービスの調整をさせて頂いたが、本来は、Cさんのケースでは、今までどうりの<週2回訪問・週2回買い物外出のサービスが必要であること>これを変更せざるを得ないのは、本人の病状が変わっていないのに介護度の変更をしてしまった、”認定の問題”である事を指摘したいと思います。

5・確かに、Cさんの場合は、要支援と要介護度1の狭間にある状態かもしれません。

その意味では、妥当な判定といわれるかもしれません。しかし、利用者さんの状態を一番知っているケアマネとしては、此れまでのサービスにより、漸く自立した生活を維持されてきたCさんの意欲を、”バサッ”とちぎってしまうような判定であり、温かみのある決定とは思えないのです。努力して、家庭内での家事をされている、要介護者に対して、あたかも、逆なでするような判定結果となっていないか心配です。此れでは、やる気の在る高齢者は、損をする事になりかねないです。



6・来年からの、介護保険改正において、もし、軽度の介護者に対するサービス制限が行われるとすれば、今回のCさんに対するサービスの制限を行わねばならなかった事と同じような事態になる事を懸念します。



今回のケースでは、サービスの調整を利用者も受け入れ、結果的には上手く推移していますが、本来、減らす必要の無いサービスを減らすための調整を遣らざるを得ないケアマネの役割を思うと大変です。(悪者役をするのは、法令を決める”おえらさん”ではないのです。)

利用者にしても、今まで使えていたサービスが自由に使えないということに、大きな反発が生まれて来る事は避けられないと思います。(今までで、最大の、反発が、今度の改正にて吹き出て来る事が考えられます。)



7・以上の問題を全体的にまとめて、来年予想される改正点の、再検討を強く訴えたいと思います。厚生省の改正案に、一番加担せざるを得ない立場はケアマネです。悪者にならざるを得ないのは、お役所の介護保険係というより、利用者に調整役として立たされる、ケアマネなのです。・・・この事を一番、われわれは懸念するのです。