no29高齢者の財産を守る方策を整備せよ。

国民生活センターの統計によると、この10年間で、商品先物取引に関する相談件数が、4倍を超えているという。

この中で契約当事者の年齢が、60歳以上の割合が(99年度)22%、しかし03年度になると37%に増えている。



こうした問題に対して、漸く国としての規制が始まり、この5月から「商品取引所法」を改正して認知症高齢者に対する勧誘を禁止すること、悪質な業者に対しては、営業停止を命じることが出来ること等を盛り込んだ。



この改正により、高齢者の保護に向けた法的規制が整備され始めてきてはいるが、まだまだ法の抜け穴が沢山あり、詐欺的な被害に遭うケースがどんどん出てきている。



先日新聞で明らかになっているケースでは、80代の男性の被害提訴を受けた大阪地裁が、某商品先物会社に対して和解を打診し、7月に解決金1億円を支払うことで和解が成立している。

このケースでは、02年頃から被害男性に認知症の症状が認められており、03年5月頃から商品先物会社からの勧誘を受け、ガソリンの先物購入を奨められた。

『確実に値上がりする』との誘導により、次第に取引額を増やしてしまい、差益や損失を繰り返す中で、担当社員が勝手に取引を繰り返すようになり、結果的には損失が膨大になった。

男性は何度も取引終了を申し入れたが拒み続けられ、個別の取引報告も無くなったという。この男性は、04年2月に脳梗塞で8日間入院し、その間も業者による2億円の大豆取引もされていた。3月になって、男性が"先物取引を止めさせてくれない"と株の売却を依頼した証券会社員に話し、不正な取引が発覚した。

取引全体では、同じ商品の買い直しや売り直しが極端に多く、損失の89・2%に当たる2億円あまりがそれらの手数料として計上されていた。





こうした被害を防ぐためには、業界での自主規制では当てにならない。

コンプライアンスが叫ばれているが、業界団体の制裁金は、僅か1500万で澄まされてしまう。(某事業所が別の高齢者に対する取り引きにおいて、意思に反して取引をしたことにより、制裁金として支払った額がそれである。)謳い文句では、高齢者の意思に反する取引を禁じているが、事実上個別業者のやりたい放題であることは明らかです。こうなると、頼りになるのは、高齢者や被害者の側に立った摘発権限のある公的機関を設置する事しかない。



今後まだまだ増えるであろう巧妙な業者の勧誘から、如何高齢者の財産を保護し規制するのかが問われている。



一定年齢を設けて、高齢者に対する取引を禁止する必要も出てくるであろう。

勿論、高齢であっても、判断力を持った人による自由な取引権は容認されるわけで、例えば、第三者機関による契約の立会いや仲裁・監視など様々な角度からの制度の確立がすすめられる必要があると思う。



大事な事は、高齢者が、安心して老後の生活を送り、自らの資産が守られ、悪徳業者からの干渉を受けない事が必要なのです。



特に、一番狙われやすい、認知症の高齢者に対する社会的保護を、早急に確立して欲しいと思います。

成年後見制度や、高齢者福祉権利擁護事業などもまだまだその活動が小さいし、多くの必要なニーズに答えきれていないのが現実です。もっと身近に相談に乗れて、尚且つ力になる制度が求められていると思います。