no23トラブル対応時に、何が問われるか?

介護保険が始まって5年、制度自体は様々な変更をしながらも、制度の認知度としては、老後に介護保険あり、との周知は出来てきた様に思われます。

サービスの開始は、認定を受けた利用者・家族と、事業者との契約によりスタートしますが、担当するケアマネジャーの調整が上手く行くかどうかも大事なポイントになって来ます。

あくまでもサービスの提供は利用者と事業所との両者の契約で成り立つ意味では、提供されるサービスに関わる問題点は、(ケアマネも共に問題解決に当たるにせよ)対事業所と利用者の関係において処理されるかたちとなります。



ここで考えたい事は、事業所のトラブル解決へ向けた理念である。

信頼関係が築かれており、それが揺るがないときは、どんな問題に遭遇してもお互いの心を開いて語り合い協力体制が築けるものでしょう。しかし、一旦それが揺らぎだすと、どうなるか?考えられないような疑心暗鬼が生まれて来る事になる。こうした、トラブル解決のポイントとして、以下の注意点を挙げておきたいと思います。



1・トラブルの発生が発覚したら、兎に角、早急に利用者・家族との話し合いを始める事。・・・この場合の大事な事は、遅い対応では駄目だと云うこと。考えられる対応の中で、最速の対応、それも、単に電話での対応だけではなく、直ぐに居宅へ出向いて直接お会いしてゆく事が先決。当然、話をするのは、トラブル当事者ではなく、S責あるいは事業所の責任者・管理者が対応するべきもの。

恐らく、この第1回目の対応において、トラブルの全貌が掴めるはずであり、直ぐに誤るべきを誤り、保障の問題があれば直ぐに上部組織との連絡等を通じて早期の解決案を探る事。この場合、責任の所在を如何対応するかが不明なときは、物損、あるいは苦情の如何に関わらず、早急な判断を下せるよう相手方にお断りをする事が大切。つまり、相手を安心させる事が必要です。

大切な事は、信頼関係の確立であり、トラブルの発生に伴う不信感の肥大化を食い止めることがテーマとなります。



2・次に、トラブルの対応における、事業所の対応責任が、マニアルかされているかどうか?これは、どんな事が起こっても、其のマニアルに沿った対応が繋げてゆけるてんで重要です。

一方、例えば物損トラブルのときに、保険担当のスタッフがすぐさまサポートに入るとか、保障上の交渉ごとに、其の専門化が当たるとか、問題対応の備えが出来ているかが問われます。

保険対応とはいっても、実際の交渉を全て事業所スタッフが関わらなければならないようでは、とても早急な解決が望めません。叉、大きな組織の事業所の場合、なかなか本部の決定が出ないので、お客様を怒らしてしまうことが多々あります。つまり、手続きが長過ぎて、うだうだ処理を経過するうちに、お客様の方が切れてしまわれるのです。

これは、明らかにトラブル処理の悪い例です。きちんと、起こる可能性のあるトラブルに対する早急な対応体制、保証体制が確立されていなければいけないのです。



3・事業所単位で、直ぐに小さな金銭的処理が出来るような準備金をきちんと用意すべきです。物損の場合、弁償などの対応義務がはっきりしており、出来るだけ早期の弁償がされる必要があります。事業所として、こういった対応が何時でも可能なように、ある程度の準備金を持っておくべきでしょう。

・・・例えば、3万円までの弁償については、事業所責任者の判断で直ぐに対応可能な用意を事前にすることにより、若し、不幸にもこうしたトラブルが発生した時に、迅速な対応が出来る事になり、スタッフとしても心強いわけです。こんな時の判断が任されてこその"管理者"である筈と思います。

ところが、事業所の管理者に、このような決定権がある程度付与されている事が少ないのが現状であり、何のための責任者だろうかと不安になるのです。サービスが上手く推移して経過し、何の問題も無い時は、責任者は、いわば、”遊んでいても良いのです。”しかし、いざ、トラブルが発生したときには、エンジンを全開して事に当たる事が出来なければいけません。

火災の際に、普段から備えている消防組織が出動するように、トラブル発生時にも、どういった迅速な対応が出切るかどうかで、其の事業所のサービス対応能力が問われるのです。

この様に考えてゆくとき、殆どの事業所ではいざトラブルが発生した折での行動マニアルがまだまだ準備不足と云えるでしょう。



4・企業理念として、利用者の自立した生活を支援すべく、若しトラブルの責任に提供者の落ち度があるならば、直ぐそれに対するお詫びと、是正がされることが大切です。叉、物損の場合は、直ぐに壊れた家財や道具等の補修に取りかかる事が必要です。勿論、其の保障の規模により、直ぐに莫大な保障が出来ないことも考えられますが、小さな物損など身近な弁償事については、気持ちよく迅速に弁償をする事が必要です。此れにより、利用者さんの信頼を崩すことなく、問題処理が出来ると思います。



ここで、もう一度提案させて頂きます。事業所の管理者を任命するなら、其の管理の仕事の中に、トラブル処理の権限も、ある程度与えるべきです。

特に、大きな組織の事業所に多い問題として、事あるごとに、上役の助言を求める必要が強制され、管理者としてのトラブル処理権限が実際的には殆ど付与されていない現実が見られます。特に、お金や、保障の問題が起こる時に、いちいち支店・本社に問い合わせて、承認を得なければ対応できないようでは、迅速な対応が出来るわけが無い。

・・・私も、一民間事業所の管理者として、何時も情けない思いをしています。自分が管理者としての仕事を任されているにも拘らず、実際のトラブル処理の際の決定権が、殆ど持たされていないのです。100円の決済件も無い、と云ったら不思議と思われますが、実際に、金銭的な権利を全然持たされずに仕事をして居ります。

任されているのは、業務の中での処理だけで、トラブル発生時の金銭的決定権が無いのです。此れでは、迅速な物損処理や、対応が出来るわけが無いのです。・・・実際は、殆ど、スタッフがまず立て替えて、支払うことも多いのです。・・・残念ながら、此れが、現実の民間事業所の実態です。



まとめとして、管理者たるものは、やはり経営者に対して、このような問題に付いての話をちゃんとしてゆく必要があると思います。与えられるべき、必要なトラブル対応資金を事前に与えられてこそ、まともな事業所運営が成り立ってゆけると思います。・・・若し、こういった資金管理を任されないのなら、それは、経営者が我々をそれだけ信用していないということであり、そもそも、管理者としての仕事をすること自体が、”安請け合い”ということになると思う。

小さな物損トラブルの対応が、迅速に処理されることにより、それだけサービスの流れ事態も正常に進む事となり、トラブルにおけるリスクの防止にも繋がる筈です。

介護保険が始まって5年、制度自体は様々な変更をしながらも、制度の認知度としては、老後に介護保険あり、との周知は出来てきた様に思われます。