ある全寮制高校での「喫煙容認」問題に寄せて。

no-mu2008-12-01

http://www.tsugeno.ac.jp/
先日から、新聞では愛知県新城市の私立黄柳野高等の喫煙室設置問題が報道されている。
この事件は、当学校の生徒たちが喫煙を止めないことから学校側が折れて喫煙容認の為の部屋をあてがい、それを「喫煙指導室」として生徒に使わせその他の場所での喫煙をなくすことによる火災等の発生を防止しようとしたとされている。
長年、生徒たちの喫煙防止指導に頭を痛めていたが、隠れて吸う者たちが後を絶たず、07年1月には女子寮のトイレでの喫煙が原因とみられるボヤが発生し現実に火災につながる危険性が問題視された。同校は山の中に立っている関係上、付近には沢山の火災につながりかねない環境下に位置しており、もし厳しく校内禁煙指導をした場合隠れて喫煙することによる火災の発生が危惧される事態となった。
こうした経緯の中で、学校側はやむを得ず喫煙を黙認する場所を校内に設置する方法をとったという。
生徒たちは通院で外出をしたおりや、親たちに頼んで煙草を購入しているらしくこうした喫煙問題に対して学校側があいまいな姿勢をとっている実態が明らかになった。

愛知県警は、愛知県青少年保護育成条例違反として、(喫煙場所の提供)容疑で学校側のこの間の措置を摘発し家宅捜査などで多数の灰皿を押収したとしている。
近く学校側の責任を問う形で書類送検される見込みという。
「喫煙指導室」が設けられたのは、07年4月らしいが、男子寮4棟の空き室にそれぞれそうした部屋が設けられており、女子の場合は寮外にバケツを設置して「喫煙場所」としていたらしい。
同校の辻田校長は、「隠れて喫煙されるより、きちんと指導できる場所があった方が良いと判断した」と発言しているが、事件発覚後はこうした喫煙容認場所を閉鎖しているという。
喫煙指導と名前は良いが、実際は喫煙を黙認するこうした学校側の言い分については、ここで改めて非難する必要もないと思われるが、興味があるのは今後学校側がどういう問題処理をしていくのか?です。

ただ単に規制を強化して、「校内でたばこを吸わせるわけにはいかない」規制強化策だけでは、何のために今まで対話指導が一定の成果を上げてきたのか?という実績が揺らいでしまうこととなる。
黄柳野高等は、12年ほど前に全国の不登校で悩む生徒たちを受け入れ、全寮制でこつこつと成果を上げてきた学校です。
こうした評価を一方では認めつつも、今回のような行き過ぎた喫煙容認にまで至った経過を教職員だけでなく生徒も一緒に如何すれば良いのかを考えていくきっかけになればと思う。

黄柳野高等のホームページを見てみると、学校設立と運営の様々に工夫された温かみを十分評価できる。こうした学校がいろんな人たちに支えられながら運営を継続する意義はあると思う。
しかし、だからと言って今回のような喫煙容認方針が認められないことも当然であり、教師と生徒親たちが喫煙問題を真剣に取り組む中から問題の解決方法を見つけて欲しいと思う。

もともと、喫煙は人間の長い歴史の中で習慣化してきた問題であり、簡単にこれを乗り越えることが出来るとは思わない。
しかし、健康問題の側面から考えていけば、今日喫煙があまりにもたくさんの病気のリスクをもたらしており特に癌における発生要因としてはもはや見過ごすことが出来ない深刻な社会問題としてとらえることが出来ることについては、しっかりと子供たちに伝えていく必要があると思う。

逃げないで子供たちにそうした知識と問題点を伝える努力がなされるならば、きっと喫煙をしない結論を子供たち一人一人が身に付けることが出来ると考える。こうした指導の努力こそが本来の喫煙指導に当たると思う。
今回のような喫煙問題は、何も黄柳野高校だけの問題ではなくどこでも抱えている共通の問題として考えられる。だからこそ、この問題に真剣に取り組んで頂きたいと思う。

黄柳野高等の職員・親たちが今回の事件をきっかけとして、新しい学校の在り方を見つけていくステップとなれば良いのにと願うものです。
・・・この話を新聞で読んだ時は、「何という指導をしているんだろう?」と学校運営を批判したい気持ちになりましたが、同校のホームページを読んでいくうちに、しだいに12年間の学校設立の歴史などを知ることが出来、こうした学校の運営に協力している人達も沢山おられることも知りました。
一つの失敗を揶揄するだけで終わりじゃなくて、今度はその失敗をばねにどういう改革をしていくのかが問われていると感じました。
こうして考える中で、何だか黄柳野高等を応援したい気持ちになってきたんです。

冬空の合間に、こんな雲たちが心を和ませてくれました。