対人援助の技術習得。

no-mu2009-01-26

ケアマネジャーという職務を続けてきて、痛切に感じる事は人間を相手にその人の自立を支援することの奥深さです。
人は飲み食い寝て育つというけど、衣食住が満たされればあとはどうでも良いと考える人はいない。基本的な衣食住の基盤の上に、どういう生き方が重ねられていくのか?が問われる。
人それぞれ感じ方考え方が多様であり、生き方においても千差万別だ。
自分が最高に素晴らしいことと感じても、もう一人にとっては何でもないことは沢山ある。
自分にとっての快適が、他者にとって不愉快となり争いごととなることもある。
自分が幸福なのに、他者を不幸に追いやっていることは1対1の人間関係だけでなく、もっと大規模な集団と集団の間でも起こる。・・・国と国との間で起こる戦争は、そうした対立の究極的な現象として、現在でもしばしば世界で発生している。

対人援助の方法論にあって、ケアマネジャーが果たす役割は対象となる被援助者の進路を大きく左右する仕事となるが、実際には決定権は利用者自身が握っている。
一人一人の人生にあって、進路の方向性を決めていくのは他ならぬその人自身であり、それを誰かが取って代わることは出来ない。
・・・たとえ認知症を患い、自分の進路を自己決定出来ない立場に立たされたとしても、自分らしさをキープしてくれる信頼できる人が側にいる事により安心して身を任せる事が可能となる。視覚障害を持つ人が、サポーターが横にいる事により不安なく街を練り歩くことが出来るように、我々もまた自分を全面的に預ける事が出来る人が側にいる事が人生における平和と安全の基本であることを知っている。

ケアマネジャーが担当するケースでは、対利用者・家族との面談、担当事業所のスタッフ、利用者の生活面で関係するインフォーマルサービス担当者等々と常に面談やカンファレンスを継続発展させる仕事が待っている。
現在担当しているケース数は各ケアマネの能力や置かれている事業所の規模にもより異なるが、大体一人当たり20件から40件といったところだろう。
しかし、担当しているケースすべてが困難ケースではない。しかし、いくつかのケースは、ケアマネの思いとは裏腹に常に流動的要素を持ち、少なからず支援継続をする上で困難を生み出している。
困難が発生することを喜ぶケアマネはいないが、一方では困難要素を体験する中からケアマネ自身の資質を育て向上させる契機を含んでいる。
困難がマイナス要素からプラス要素に転換できるか否か?これは問題へのアプローチの仕方により決定される。
もし、独りよがりに価値観を強制して押し付け、利用者の自立ではなく自分の感性を対象者にお仕着せることになれば、自ずと対象者の気持ちは離れて行き支援は成立しない。

しかし、適切なアドバイスと声かけが積み重ねられればおのずと信頼関係も息づくだろう。
人が人の人生を支援することは簡単ではない。時にはその人の判断に対して異議を唱える必要もあるし、対象者とは異なる意見も表明することが要求される。しかし、いつも意見を異にしていては自ずと信頼関係は崩れる。ポイントはどこで賛同し、どこで異議を唱えるのか?そのメリハリにかかっている。
対象者の支援をする役割を果たしていることが、常にその人と同じ見解を有することや価値観に賛同することとはならない。時には、其の人の判断に異議を唱え、何故異なる意見を持っているのかをその人が理解しやすい形で示していく必要もあろう。・・・この微妙なその都度の判断力を養うことこそが、対人援助にとっては重要なファクターとなろう。

これは理屈ではなく経験で身に付けていかねばならない。どんな面談において相手が何を訴え自分がどう答えているのかを判断し、今必要なサポートの在り方を体現することが援助者として求められている。これはスーパーバイザーとしての資質に関わる技法であるが、一つの解答を導き出すというよりも、人それぞれの思いを重ねてより深みのある感性を研ぎ澄ますことでもあろう。お互いの人格が相手の話と思いを想像し、相互の希望と願いをつなぎ合わせてどういう共存が可能であるのかを考えていくことが必要となる。

カンファレンスとスーパーバイズの違いについて、今日の研修では学んだ。
一定の最良の答えを見つけ出すカンファレンスの手法と、参加者それぞれの気づきを踏まえて相互の感性と判断の共有を進めるスーパーバイズの手法・・・そうした違いを確認しつつ、それぞれの場面で何をするのか?を常に意識することが求められる。

実際のケースでは、ある時はケアマネがスーパーバイザーとして対象者と面談することがあっても、時には立場が逆転して自らスーパーバイジーとして360度の方向から見つめられアドバイスされることもあろう。これは総合的な関係だと思う。
一方的に、ケアマネジャーだけが支援を継続するものと考えるのではなく、必要に応じて利用者や家族・サービス事業者のスタッフにより様々に教えられ感化されて学んでいくものではなかろうか?こうした双方向の手法、「ダイナミズム」が存在するケースを担当することにより、対象者もケアマネジャーも大いに良い意味で刺激し合える関係となるだろう。

なかなか、理想どうりにはいかないものだが、常にこうした対人援助における原点を振り返りつつ実際のケースに対して「自分という色眼鏡」をかけずに対峙していきたいと思う。

主任研修のお昼休みにビルの外に出て見ると、側面ガラスに雲が映って素晴らしいパノラマが広がっていました。

自然の芸術でしょうか?私には、生き物のように見えます。・・・なんの怪獣かな?