個人の選挙の自由を侵す企業ぐるみ選挙を糾弾する。

今回の参議院選挙は民主党がひとり勝ちした。今これから私が書きたいことは今後の国会運営のことではなく、民主党マニフェストのことでもない。私が言っておきたいことは、今度の選挙で、とある企業が行った著しい自由の束縛に関してです。…以下に、その内容を説明していきたい。



1・私が属している事業所は、全国展開の介護事業所です。N学館としておきましょう。この会社は在宅事業者連絡会議を立ち上げて、介護事業者としての繋がりを作り、今度の選挙で候補者を立てていました。・・・問題は、その候補者が自民党から立候補していることでした。会社は、「介護業界からの代表として、選挙を戦う」魂胆でした。選挙前から候補者を管理職の会議に連れてきて応援を示唆していましたが、選挙が始まるとだんだん露骨になりました。



2・すべてのセンター長を読んで、謀候補者のポスターや選挙ポスターを配り、職場に張ることを指示し、ヘルパーなどスタッフに投票を周知するよう指示をしました。・・・立候補を発表して、依頼をするまでは許せるとしても、投票を強制することはどうしても許せませんでした。

事業者たちがどういう考え方をするのか?それは勝手ですが、事業者の押しつけで、候補者を一方的に宣伝させるという指示は、どう考えても可笑しい。ましてや、自民党から立候補する候補者です。誰だって、従いたくない。

しかし、N学館は、それをセンター長に押し付けてきたのです。

選挙後半には、「緊急営業会議」と称して、センター長を招集し、会長が演説し、候補者が投票を呼び掛ける会議を強行しました。・・・こうした会議が、会社の職制を利用して、会社の経営者から指示が出され、個人の自由を踏みにじって、特定の候補者の選挙活動を事実上強制される事態に至ったことを糾弾したい。



3・こうした企業ぐるみ選挙は、実は日本の風土ではいろんな所で行われているのでしょうか?少なくとも、私にとっては初めての体験でした。

自分の職場で、こんな不法な命令が、さも当然のようにされていることを有耶無耶にしたくありません。



すぐさま、当社にある組合にも連絡し、大阪市選挙管理委員会、および警察にも通報しました。

警察は、訴えられている内容については記録するが、それだけの内容では動けないと答えました。・・・具体的に、公職選挙法の何に違反しているのかを示してくれというのです。

組合は、何度か謀候補選挙事務所に警告の電話をしてくれたそうです。

・・・しかし、いくら電話をしても、違法な行為は止められることはなかった。全国の拠点センター長に、謀候補者の周知徹底を指示してくるのです。

・・・特に後半戦では、自民党劣勢が伝えられていることもあって、しつこくどこまで票が固められているのか?などと問うてくる始末です。



4・私は、当初から、こうした選挙活動に疑問を感じておりましたので、一切の票集めの行動は拒否しました。(職場に、候補者のポスターを張ったり、選挙チラシを書くスタッフに配るまでは支持しましたが)それ以上の、協力については、個人の政治信条の自由に反することにより、お断りをしました。特に、終盤での「緊急会議」に欠席したことから、所属の課長、支店長とその上役あたりの詰問を受け、「何故、会議に欠席をしたのか?」しつこく問いただされました。



私は、あくまでも専門職としての自分の仕事をするために、会議に出られないことを主張しましたが、その返答が不満だったようです。

上司たちは、「会社の指示、業務遂行義務に違反する」と言いたいようでした。

しかし、私は、自分がひとりのケアマネジャーとして、決められている業務を全うすることは大切な仕事であること、それをほって、訳の分からない会議に出ることは出来ないことを伝えました。



選挙の協力については、自民党候補者の応援は一切したくないこと、またそれを強制されることは法律に違反していることを主張しました。



私の直属の上司たちは、私を、業務命令に従わない、として処分しようとしているようです。・・・しかし、おそらく彼らはそこまで出来ないでしょう。

なぜなら、もしそうしたら、私が徹底的にこのことを追うやけにし、裁判で争うつもりがあることを薄々知っているからです。



5・今回、選挙が終わり、会社の擁立していた候補者は惨敗しました。

票数からいって、国民の支持を全く幅広く受けることなく終わってしまったというのが正直な感想です。・・・比例代表候補で、4万票弱ですから、そもそもの選挙運動の計画が甘く、支持母体の基盤も脆弱であることが証明されたのです。

まして、今回の「企業ぐるみ選挙」のやり方では、一般ヘルパーさん達からも支持を受けることなど、到底無理な話です。



6・この謀候補者を担ぎ出した組織は、介護事業者の経営者たちです。

彼らは、国会の場に、自らの利害を反映させる候補者を作りたかったのです。

そのことにより、介護保険などの改定時に、法案作りなどで一定の圧力をかけたいと目論んでいたことは推測に値する。





7・介護事業者のきれいごとに労働者が騙されるわけにはいきません。

確かに介護報酬が著しく事業者の利益確保を難しくしていることは歪めないとしても、この間、従業員の賃上げを、2年間も滞らせている張本人は誰なのでしょう。ただでさえ、一般労働者のレベルより低い給与が、より格差が開く要因を作っているのは、介護の事業者連中であることは明らかです。

そういう経営者たちが担ぎあげた候補者を、どうして介護労働者が支持しなければならないのか?

まさしく、「羊の皮を着た、オオカミ」となる、こうした似非「現場候補」をまともに支持する人などいない筈です。



8・秋から来年にかけて、おそらく政局は流動化し、今度は衆議院選挙が行われるはずです。次の選挙は、今回よりももっと激しく与野党が激突する選挙となります。警戒しなければならないことは、おそらく次の選挙でも、企業ぐるみ選挙をやる候補者が沢山出るであろうことです。一人の市民として、こうした会社の職制を利用する選挙は違法であることを明らかにし、多くの人たちの声で、こうした動きを糾弾すべきであると考えます。職制を利用して、政治的な自由を奪い、投票を促すことは当然行ってはならないことです。各地方の選挙管理委員会、および警察は、こうした違法な選挙運動を、厳しく取り締まるべきであると考え、ここに警告の文を記します。